負けはしたが、阪神秋山拓巳投手(26)は「エース格」の称号を手にした。前回9日の対戦と同じく、菅野智之投手(27)との投げ合いになった23日の巨人戦(甲子園)。両軍無得点のしびれるような展開から先に秋山が失点し、7回5安打1失点で3敗目を喫した。それでもこの好投で、秋山の防御率は2・29に上昇。同僚のランディ・メッセンジャー投手(35)の2・36を上回りチームトップに立った。

 先発秋山が、たった1球に泣いた。0-0の7回2死一、二塁のピンチ。8番小林をカウント2-2と追い込んでいたが、悲劇が襲う。投じた112球目は無残にも右翼線で弾んだ。二塁走者が生還。この1点が決勝点となり、高めに浮いた143キロの直球が、命取りになった。「最後の最後で精度が甘くなってしまった」。その言葉通りだろう。そこまでは有無を言わせないパーフェクトな投球を披露していたのだから。

 7回2死から二塁打を浴びると、無理に勝負せずに歩かせて一塁ベースを埋めることを選んだ。「中井さんを歩かせて、小林さんとの勝負という指示でした」。安全策を取ったつもりが、伏兵の一打にやられた。それでも後続を打ち取り7回を投げて5安打1失点。最少失点に食い止めたが、味方打線の援護に恵まれず黒星がついた。4月25日DeNA戦でも7回途中1失点の力投も打線が振るわず0封負け。今季の秋山は好投するも、勝ち星がついてこないことが多い。

 9日に登板した巨人戦の相手投手も菅野。今季2度目の投げ合いだった。この日の黒星で菅野とは1勝1敗となった。「菅野さんはピンチで抑え込んでいる。そこがエース。(自分との)大きな違いが出てしまった」。反省を繰り返したが、秋山の方も、もう立派なエース格だ。8試合で3勝3敗と五分の成績だが、QS(クオリティー・スタート)は7試合。ここ6試合連続でQS成功と、安定感は群を抜いている。防御率では2・36の同僚メッセンジャーを上回り、2・29でチームトップに立った。

 バッテリーを組んだ梅野は「先発としての役割は果たしている。終盤はコースにきっちりと来てた。先に点を取られたくないという気持ちで戦っていた」と秋山をたたえた。さらに「結果が負けなので、お互いに反省。また自信を持って投げられるように前向きな反省がしたい」。ともに成長を続けようというメッセージも、背番号46に送った。

 「7回1失点でね。菅野とがっぷり四つを組んで、あれだけの投球をしてくれたら十分。あの1点をどうこう言うのは酷だ」。敗戦後、金本監督は26歳右腕をかばった。まだ今季41試合目。やり返す機会は、きっと来る。【真柴健】

 ▼秋山が7回を失点、自責点ともに1の好投で防御率を2・29とし、メッセンジャー2・36を超えた(規定投球回到達は阪神ではこの2人)。全8試合中7試合がクオリティースタート(QS=先発6イニング以上、自責点3以下)で、QS率87・5%はセ規定投球回到達者中2位(最高は中日バルデス90%)。投球回55イニングもチーム最長で、エース級の投球を続けている。