重盗に、今年の楽天が詰まっている。オコエ瑠偉外野手(20)が1点リードの2回2死一、三塁の三塁走者で、ホームスチールを成功させた。走塁は久米島春季キャンプから徹底してきたテーマ。俊足、主軸、大砲も全員が、次の塁を狙う意識を持ち、結果として出ている。開幕前に、楽天の「走り」が加速してきた。

 マラドーナ!? いやオコエは、まぎれもなく左手で触った。「フォーッ」と、興奮気味に仲間とハイタッチを交わした。2-1の2回2死一、三塁、銀次の打席。1ストライクからの2球目は、真ん中低めのボールとなった。一塁走者の岡島は投げた瞬間ではなく、キャッチャーミットに収まったことを確認し、二塁へスタート。広島捕手・石原の送球を遅らせ、あえて一、二塁間で挟まれた。そこで三塁走者・オコエも本塁へ仕掛けた。

 ホーム上をまたぐ石原の姿を確認。「回り込むよりも直線的に」と、的確にジャッジ。低い体勢を保ち、倒れ込みながら、股の下に左手を滑り込ませた。「ソフトタッチですね。やったことないですよ」と人生初のホームスチールを成功させた。微妙なタイミングだったこともあり、広島側からリプレー検証をリクエストされたが、判定は覆らず。梨田監督は「いいスピード。見応え、迫力あった」と一連の流れを評価した。

 意識高い系のオコエは、準備を進めていた。試合前の打率は1割8分8厘。「結果を出していかないと開幕1軍はない」と6試合ぶりのスタメンに燃えていた。第1打席となった2回、自らの右前打でチャンスメーク。岡島の内野安打で二塁に進むと、1死満塁から島内の中堅深くへの犠飛で、広島丸の背走キャッチに反応し、果敢に三塁まで進塁した。「チームでそういう約束でやって来ている。自分の持ち味は足。狙っていかないと自分の存在意義がない」。

 「次の塁」は春季キャンプから徹底してきた最重要テーマだ。この試合の盗塁数は「2」。前日の広島戦ではアウトにこそなったが、大砲ペゲーロも盗塁を試みた。13日のDeNA戦では、NPB随一の巨漢アマダーも激走。2回、左安打で出塁すると、ヒットエンドランのサインが出た藤田の左翼線二塁打の間に一塁から三塁まで進んだ。選手間に、強く走塁の意識が根付く。鍛錬の積み重ねが、開幕前に結果として表れ始めている。【栗田尚樹】