<オープン戦:ヤクルト2-1日本ハム>◇12日◇神宮

 怪物が神様を見返す。日本ハム高校生ドラフト1巡目の中田翔内野手(18)がヤクルトとのオープン戦に途中出場し、8回の唯一の打席で空振り三振に倒れ、連続打席無安打は14に伸びた。開幕1軍へがけっぷちに追い込まれたが、試合後は神様に文句を言って自らを鼓舞した。首脳陣は13日の教育リーグ湘南戦(千葉・鎌ケ谷)を見て結論を下す方針で、怪物は逆転の豪打にかける。

 怪物は下を向くことはなかった。開幕1軍入りへ厳しい状況に追い込まれているのは誰よりも分かっているが、いつも以上に張りのある声で周囲を笑わせた。

 中田「完全にやばいっすよ。今のうちにプロの厳しさを知っておけってことですかね、神様が。ふざけるなよ、神様!」

 不振を神様のせいにしたわけではない。努めて明るく振る舞い、自分を鼓舞するための姿勢だった。

 この日の出番は5回の守備から。ベンチから一塁の定位置まで、全力疾走で向かった。2日の中日戦から1本のヒットも出ていないが「どうせやるなら、明るく、楽しくやろうぜ」という平野打撃コーチのゲキを実践。一時は漂っていた悲愴(ひそう)感をぬぐい去ったが、打撃での思い切りの良さは戻りきっていない。

 唯一の打席となった8回1死。ヤクルト松岡の初球の真ん中高め直球を簡単に見逃すと、4球目は落ちる変化球を空振りしてカウント2ー2。そして、バッテリーがつり球として投じた高めの141キロ直球に、バットは空を切った。2日の中日戦第3打席からの連続無安打は14打席になった。

 中田「最後はまっすぐも変化球も頭になかった。前までだったら打てていた球ですよね?

 調子がよかったら、初球の甘いボールも見逃してないです。積極性がなくなってます。なんでですかね…」。

 初めて体感するプロの投球と、結果が伴わないプレッシャーで頭の中は混乱している。梨田監督も「1つ振ったらその球が気になるようだ。またフォークとかスライダーが来るんじゃないかと思ってるんだろう。状態はよくない」。厳しい表情で分析した。

 試行錯誤が続く。打撃練習では、体重が前に流れるのを防ぐため、スタンスを狭めた。試合前、怪童と呼ばれて西鉄で本塁打を量産、引退後もレイズ岩村らを育てた中西太氏(74)に、下半身の使い方を指導された。「若いときにこそ基本をしっかり。資質があるんだから迷うことはない」。フォームの開きは少し抑えられたが、結果で応えることはできなかった。

 先発出場する13日の教育リーグ湘南戦(鎌ケ谷)が、開幕1軍入りへの最後のアピールの場になる。試合後に首脳陣が今後の方向性を出す方針。山田GM、梨田監督とともに視察予定の福良ヘッドコーチは「同じ状態ならルーキーよりも経験者を選ぶ?

 それもあるよなぁ」と言った。中田も「もう、真剣に(本当に)ヒット打たないと…」と痛感している。豪打が爆発するのが生き残りの条件。可能性はわずかでも、魂をバットに込めて打席に立つ。【本間翼】