22日に行われるアスレチックスとのオープン戦に先発する巨人上原浩治投手(32)が21日、日本プロ野球界を思っての提言をした。「日程的に問題がある。パが始まったばかりの、なぜこの時期にメジャーとやるのか」と話し、同じ時間帯に行われるパ・リーグ公式戦の真剣勝負に水を差すと指摘した。自身にとっても、4月1日の中日戦先発に向け、最終調整を行う大切な登板になる。複雑な思いを胸に抱きマウンドに立つ。

 練習を終えた上原は、決意したように口を開いた。「試合を行うこと自体は賛成だが」と前置きした上で、持論を展開した。

 上原「疑問しか残らないな。パが始まったばかりのこの時期に、なぜメジャーと練習試合をするのか、分からない。明日の登板で、収穫は何もないと思う」。

 メジャーを相手にした大事な開幕前最終登板となるが、20日に開幕したパの開幕3試合を見て、心の中にあった「?」は確信に変わっていた。

 すべて1点差の好ゲーム。昨年12月の北京五輪アジア予選決勝リーグでともに戦ったダルビッシュ、小林宏、涌井、加藤大が、こぞって力投した。真っ向勝負の素晴らしさをあらためて感じると同時に、自らのア軍戦先発が、同じ日本プロ野球の仲間に水を差すことになると思った。選手会の会議でも、パ開幕直後のメジャー戦実施について議論になった。ヤクルト宮本は「日本プロ野球を何とかして盛り上げようとしているのに、おかしいという声が多かった」と上原の意見を支持する。

 自身の状態にも微妙な影を落としかねない。開幕投手でなく、最大のライバル中日との初戦(4月1日、東京ドーム)先発にあえて回ることが決まった。昨年辛酸をなめたオレ竜を、直接たたく重責。その最終調整の場が、打者の傾向も、野球の質も大きく異なるメジャー相手。しかも登板は、わずか2イニングの予定だ。「投げ終わった後に、ブルペンで投げ込むことになるんだろうな」。2年ぶり先発復帰へ向け、払う必要のない細心の注意まで要求される。

 開幕を控え、状態を最優先させたい。上原の意向は現場の総意ともいえる。チームは今月、オープン戦、練習後に激励会、パーティーがめじろ押しだった。実は上原は「選手はコンディションを整えることが一番大切だから」と代表し直談判。席上、選手が立ちっぱなしにならないよう変更してもらっている。

 今回のメジャー戦主催は読売新聞社。巨人の親会社である。日本球界とシーズン本番を見据えた上原の勇気ある提言。いみじくも人材の海外流出を憂う親会社の矛盾点を指摘することになった。【宮下敬至】