<ソフトバンク7-2阪神>◇23日◇福岡ヤフードーム

 いつのまにか逆転されていた。阪神1点リードで迎えた6回裏、松田の逆転二塁打は打席周辺のアンツーカー(赤土)でワンバウンド。ここでバウンドするのだから、当たりそこねで完全に先発安藤の勝ち。ところが、ヤフードームではこのゴロが高く弾んで三塁手の頭を越えてしまう。岡田監督も「03年の日本シリーズを思い出した」と、同じような当たりで敗退した5年前の一戦を口にしてムスッ。24日のソフトバンク先発は天敵の杉内。スカッと打って欲しいなあ。

 打ち取ったはずの打球が関本の頭上を越え、三塁ベンチの岡田監督は顔をしかめた。5年前の03年、当時はダイエーだったホークスに敗れ去った日本シリーズの悪夢が、痛烈によみがえってしまった。

 「不運というか(打席周辺の固い)アンツーカー(赤土)なあ。思い出したよ、日本シリーズを。伊良部が村松に打たれた打球をな。ワンバウンドした打球が内野手を越えていったら、しょうがないやろ」

 1点リードの6回裏に逆転を許した。それまで粘っていた先発安藤を攻略したのは、ホークス打線の粘りと、ヤフードームの固いグラウンドだった。小久保の二塁打で同点となり、なお無死満塁で松田の打球はアンツーカーではずむゴロ。完全に打ち取っていたが、そのゴロは関本がジャンプしても届かず、外野に抜けて二塁打になった。決勝の2点を失った打球は、03年シリーズの2戦目に先発伊良部が崩れるきっかけとなった内野安打に似ていた。

 「ワンバウンドで外野にいく打球なんて打ったことがないから、分からん」

 土と天然芝の甲子園を本拠地として戦ってきた岡田監督には、経験値の少ない打球だった。人工芝ではずむ打球はあきらめがついても、アンツーカーで高く跳ね上がるのはこのドーム球場特有。甲子園で3勝しながら敵地で全敗して日本一を逃した苦い思い出も重なり、ただただ首をひねった。

 先頭の川崎に許した左前打もカウント2-0と追い込んだ後、当てただけの打球だった。「あれ、外のボール球だったけどな」と岡田監督は打った相手をほめるしかなかった。続く松中も高くはずんだ三塁内野安打。決勝打を浴びる前にすでに、どうにもせき止められない悪い流れに飲み込まれていた。

 「最初に2点を取った後はチャンスもあまりなかった。作れる時には作れるんだけどな」と1回の2得点に止まった攻撃も消化不良。24日の2戦目は、悪夢のシリーズで2勝を挙げてMVPとなった杉内が相手。この日ぶり返した5年越しのうっぷんを、天敵から晴らすしかない。【町田達彦】