<楽天2-5阪神>◇4日◇Kスタ宮城

 「野村のワナ」にはまって大敗した岡田阪神が、仕返しに成功した。金本3ラン、JFKの無安打リレーと完ぺきな阪神の勝ちパターンに持ち込んだ。前日、「明日、楽しみにしとこ」と言い残した岡田監督は「今日は普通のうちのペース」としてやったり。ただし、この日の試合前、野村監督はサイン盗みの話題から、岡田監督を「前科者」にたとえるなど、両者の間の新たな遺恨に発展しそうなムードもある。バトル第2ラウンドは17、18日に甲子園で行われる。

 やられたら、やり返す-。威勢のいい言葉だが、実行するのは難しい。岡田監督はいとも簡単にやってのけた。予想外の完敗から、一夜明け、阪神が強い勝ち方で1勝1敗のタイにした。4番が打ってJFKで締める。2位中日とのゲーム差は今季最大の「6」とした。それでも岡田監督は会心の勝利を当然のように受け止めた。「今日は普通のうちのペースやから」。表情を崩すことなく、淡々と振り返った。

 この日の試合前、実は野村VS岡田に新展開があった。前日3日に、阪神は今季初の二けた失点で初戦を落とした。岡田監督は「すごいね、楽天」とまずは相手を持ち上げたが、最後は「これだけ点取られるんやから」と皮肉めいたセリフを残した。そして「明日、何とかせなあかん。楽しみにしとこ」と言い放った。野村野球の術中にはまり、逆襲を宣言。その夜はチーム宿舎の食堂で深夜2時近くまでコーチ陣とテーブルを囲んだ。ここで何らかの対策が練られたのは間違いない。

 成果は確かにあった。先発上園は下柳と同じ轍(てつ)を踏まず、5回2失点の力投。試合の主導権を握った。打線は2回に藤本の適時打で先制し、3回には桧山の三塁打で加点。そして、5回に金本が試合を決める3ランを右翼席にたたきこんだ。7回以降はJFKが無安打で完ぺきなリレーを披露した。

 ただし、話はこれで終わらない。試合前の楽天ベンチでは、こんなやりとりがあった。前夜の岡田監督の試合後の言動を「楽天のサイン盗みを疑っているのでは」と解釈した記者が、野村監督に問いかけた。監督の表情は一変し、ムスッとしたまま話し始めた。「そんな、時代遅れなことせんよ。『のぞき』をしたら永久追放だろ?

 そこまでして、やるわけないだろ。自分が前科があるから、そう思うんだろうな。甲子園のバックスクリーンとかな」。

 さらに野村監督は初戦で下柳-矢野のベテランバッテリーを攻略したことについて、データ分析の成果であることを強調。「オレが3年(阪神に)いて、分かっていないんだな。頭で野球をやっているのが、分かっていないよ。矢野の配球の傾向なんて、いやってほど分かっている」と頭脳戦での勝利であることを力説した。

 こんな、試合前の“口撃”バトルがあっての快勝だけに、岡田監督は「昨日言っていた通り。それだけよ。秘策は言えんけどな」と不敵に笑った。野村監督の「頭で野球をやっている」という言葉を耳にすると「それでええんちゃう」と吐き捨てて、帰りのバスに乗り込んだ。杜(もり)の都の2日間の出来事が、新たな遺恨に発展するかも。次回のマッチアップは17、18日で、甲子園に舞台を移す。【田口真一郎】