<巨人3-2ヤクルト>◇25日◇東京ドーム

 原巨人が総力で逆転サヨナラ勝ちした。ヤクルト戦0-2と劣勢の8回、ヤクルトの勝負手スクイズバントを外して流れが変わった。9回、守護神林に襲いかかり、1死満塁から阿部慎之助捕手(29)は内角低め速球をよけずに死球で同点。最後は代打谷佳知外野手(35)が、劇的な中前打で決めた。チームは相変わらず「満身創痍(そうい)」の状態だが、貯金は今季最多の7。球宴前の残り4戦全部勝って2けたにするつもりだ。

 かつて自分も袖を通した背番号8が、喜ぶナインの手で、もみくちゃにされていた。手も足も出ない状況からのサヨナラ劇に、原監督も気持ちが高ぶった。殊勲打の谷を中心にナインの喜ぶ姿が心地よかった。「完全に抑えられていた状況で、最後にいい形で勝てた」。9回、小笠原が足を引きずりながらの二塁打で突破口を開き、ラミレスが右方向へつないだ。最後は会心の展開だった。

 1つのサインが試合の流れを変えた。2点をリードされた8回1死一、三塁だった。初球に続き、1-2からの4球目も、カウントが悪くなるのを承知でウエストのサインを出した。これが見事に決まった。スクイズを外し、三塁走者を刺した。「3点はデッドラインだ。(ならば)3点も4点も同じ。(四球を出して)満塁になってもいいと思い切った作戦をとった」。伊原ヘッドコーチも「あれで一気に流れが変わった。いい決断をした」と絶賛した。

 毎年6月はあまりいい季節ではない。梅雨時に体調を崩すことが多いからだ。今季もそうだった。重い荷物を持ちながらくしゃみをしたところ、ぎっくり腰になった。だが、ケガ人が多く苦しんでいる中で、自分まで言い出すわけにはいかない。痛みをひた隠した。7月に入り、ぎっくり腰も癒えた。時を同じくしてチーム状況も上向いた。

 逆転への流れを生かしたのは、阿部だった。8回、相手にプレッシャーをかけるソロ本塁打で追い上げると、9回の満塁の場面では林の向かってくる速球に対して逃げず、押し出し死球を取って同点にした。帰りがけ、階段で足を踏み外し「大丈夫じゃないですよ」というほど左足太ももの内側は腫れていた。原監督は「避けられたボールだった。勇気を持っていってくれた」と賛辞を惜しまなかった。

 この日は4月13日以来、李が戻ってきた。原監督はベストメンバーで試合ができることに「昨日の夜から気持ちが高ぶってました」と打ち明けた。9回には盗塁のサインを3年ぶりというラミレスにも出した。原采配と阿部の執念で勝利を呼び込んだ巨人。まだ球宴前だ。下を向くわけにはいかない。【竹内智信】