<西武4-1オリックス>◇17日◇西武ドーム

 最後の打者を打ち取った西武岸孝之投手(23)は、少しだけ不満顔だった。渡辺監督に「完封してこい」と送り出された最終回、あと2死まで迫りながら失点。1死三塁で浜中に犠飛を許し「悔しかったなあ」と唇をかんだ。両リーグ最多となる3度目の完封こそ逃したが、3安打完投でチームトップの帆足に並ぶ10勝目。西武では00年松坂以来となる新人から2年連続2ケタ勝利をマークした。

 2年目の進化は、十分に見せた。後藤に初安打を許した4回、カブレラを歩かせて無死一、二塁、ローズにカウント1-3。これまでなら崩れてもおかしくない状況で空振り三振を奪った。渡辺監督は「ローズには四球を覚悟したけど、あそこで粘れたのは成長の証し」と目を細めた。

 球宴明けの8月に入って3連勝。昨年から走り込みの量を増やした細身の右腕は、夏バテ知らずだ。ダッシュの瞬発力は、盗塁王の片岡よりも速く、渡辺監督は「全身がバネの郭泰源そっくり」と抜群の身体能力で活躍した助っ人右腕にたとえるほど。2年目のジンクスを吹き飛ばした岸は「いつのまにか(10勝していた)って感じ。なぜかわからないけど、フォームのバランスが良くなった」。秘めた能力は底を見せていない。

 課題も見つけた。3連勝の内容は、いずれも8回まで無失点。1度は救援を仰ぎ、2度は9回の失点で完封に失敗した。「投手コーチから“前科2犯”って言われました」というのも大きな期待の表れだ。成長を続ける岸の好投で、貯金は今季最多17。ソフトバンクが勝ったため、この日の優勝マジック点灯はお預けとなったが、18日マジック29点灯に挑戦する。【柴田猛夫】