<中日7-3広島>◇31日◇ナゴヤドーム

 中日2年目の清水昭信投手(24)がプロ初先発初勝利をマークした。140キロ中盤の直球と変化球を低めに集め、6回2/3を5安打3失点。チームの先発投手不足を救い、負ければ初めて勝率5割を割るピンチを切り抜けた。負ければ3位に並ばれていた広島を逆に2ゲーム差に引き離し、Aクラスを死守した。

 ベンチへ下がる清水昭に観客席から大きな拍手が降ってきた。5点リードの7回、1点を失ってなお2死二、三塁とされたところで降板となったが、ファンは好投をたたえた。6回2/3を5安打3失点でプロ初先発初勝利。「夢のような感じです。目に映るのが夢のような景色でした」。試合後、ウイニングボールを受け取ると感極まった。

 負ければ借金生活転落、広島に並ばれる正念場で2年目右腕が踏ん張った。最速146キロながら球質の重い直球とスライダーで4回まで無安打投球。2回までに5得点という打線の援護にも守られて快調に飛ばした。5回嶋に初安打を許すと1死一、二塁のピンチを背負ったが、梵をスライダーで空振り三振、代打小窪を143キロの直球で見逃し三振。勝利投手の権利を手にして叫んだ。

 スタンドでは両親が観戦していた。「今まで不自由なく育ててくれた両親に恩返ししたいと思っていました」。三重高を卒業後、米大リーグ・パドレスの入団試験を受けたが、最終テストで落選した。1度は愛知県内の企業に就職したが、野球をあきらめることができず3カ月で退社。新聞配達、郵便配達のアルバイトで生計をたてながら翌年名城大に入学した。大学で成長して中日の6巡目指名を勝ち取った。遠回りの野球人生を支えてくれた両親にまず1勝をプレゼントできた。

 「あらら、ゲンちゃん」。落合監督はパチンコキャラクター「大工の源さん」に似ていることから定着した清水昭のニックネームを口にして上機嫌だった。「よく放ったな。よくあそこまで持ったよ。期待はしていたけどな」。故障者続出の投手陣に一筋の光明が差し込んだ。【鈴木忠平】