<横浜4-3阪神>◇10日◇横浜
その瞬間、阪神ベンチを沈黙が包んだ。1点を追う9回、2死一、二塁の同点機で新井は右飛に倒れた。先制2ランを放った金本、負けている展開でも8回を無失点に抑えた藤川も、厳しい目で現実を見つめた。142試合目のV逸。最後まで戦い続けた選手は、最大の屈辱を味わった。悔しさは18日から第1ステージが始まるクライマックスシリーズ(CS)突破、巨人を撃破、そして日本一となって晴らすしかない。
放心状態だった。目の前で起きた現実をすぐに受け止めることはできなかった。健闘をたたえるファンの声援も、V逸をののしる厳しい声も、はるか遠くにしか聞こえなかった。ベンチ裏からバスへと向かう道。重い、無言の列が続いた。
1点を9回2死一、三塁で新井に打席が回ってきた。後ろには主砲金本が控えている。だが、夜空へと上がった新井の打球は、無情にも右翼吉村のグラブに収まった。142試合目でのシーズン終えん。新井は天を仰ぎ、腰に手を当てたまま、しばらく動けない。出番を待っていた金本も、足をひきずるような重い足どりでベンチに引きあげるしかなかった。
悔しさしかなかった。何を聞かれても、言葉など浮かんでこなかった。金本は駆け寄ってくる報道陣の前に手をさし出し、自ら質問を制した。新井は何を聞かれても、地面のアスファルトを見つめたまま、うつろな表情でバスへと歩みを進めることしかできなかった。それだけ優勝への思いは強かった。バスに乗り込む際、ファンから「よくやった」とねぎらいの言葉を掛けられても、振り向くことはできなかった。バスの中でも天井を見つめ、ただため息を繰り返すしか術はなかった。
だが、いつまでもショックを引きずってもいられない。悔しさをにじませながらも、矢野は必死に前を向き直した。「受け止めるところは受け止めて…。CSもあるんやから」。途中出場ながら2安打と気を吐いた葛城も「ショックは大きいけど、早く受け止めて、切り替えて次に向かうしかない」と言った。
1週間後の18日からは、CS第1ステージが始まる。3位中日との3試合の短期決戦。これを突破すれば、日本シリーズ出場をかけて、巨人にリベンジするチャンスがある。もう切り替えるしかない。ファンの誰もが、猛虎再起を願っている。【福岡吉央】




