<CS第1ステージ:阪神0-2中日>◇18日◇第1戦◇京セラドーム大阪

 中日がクライマックスシリーズ(CS)第1ステージ突破へ、王手をかけた。阪神との第1戦で、“ポストシーズン男”ことエース川上憲伸投手(33)が7回4安打無失点と好投。浅尾-岩瀬のリレーで2-0の6安打完封した。打線も4番ウッズが1回に先制打、3番森野が6回に右越えソロを放った。今季6勝17敗1分けだった虎に完勝した落合竜は、昨年からCSは6連勝。19日、巨人が待ち受ける第2ステージ進出を一気に決める。

 エースのプライドだった。川上は、2-0の7回2死二塁で代打葛城を迎えた。落合監督がマウンドに来た。

 落合監督

 2つに1つだけど、どうする?

 川上

 投げます。

 7イニング目は7月18日阪神戦以来3カ月ぶりで「スタミナはつらかった」という。志願の続投。葛城を一ゴロに仕留めると両拳を握りしめて細かく上下させて絶叫した。

 阪神打線を沈黙させた。最速148キロの直球は、制球が安定しない。谷繁のリードでシュート、カットボール、フォークを多用。「調子が良くなかったから、動かすボールが中心。フォークも多く使った」。豪腕でねじ伏せるスタイルを封印し、7回を4安打無失点。谷繁は「その日の状態によって(投球を)変えることができる。あいつだからできる」とうなった。

 「骨折したんだ。体全体が…」。北京五輪から帰国した8月24日、成田空港近くのホテルで、疲労をそう表現した。2軍調整に1カ月を費やし、初の最優秀防御率タイトルや5年連続2ケタ白星を逃した。それでも「僕はロボットじゃない。全部を狙うことは無理」と割り切った。

 メダルなしの五輪で空いた心の穴を埋めてくれるのは、個人タイトルではなく、チームの2年連続日本一。CSは3戦3勝。日本シリーズを含めたポストシーズンは6勝3敗、防御率2・18と勝負強さを見せつけている。落合監督は「流れもあるだろうし、プライドもあるだろう。投げられるようになっただけでもいいんじゃないか」と戻ってきたエースをほめた。

 第2ステージ進出に王手をかけた。川上はお立ち台の後で勝利球を客席に投げようとした。しかし右腕がアイシングで固定されたために自分の真上に上がって手元に戻ってきた。「失敗した。ギャグじゃないのよ」としきりに照れてから、惜しげもなく笑顔で勝利球をファンにプレゼントした。指揮官は言う。「このチームとやるときは、きちっとした野球をやらないといけない。すきを見せない。そういう意味ではいい試合ができた。まだ始まったばかり。明日は、明日」。19日、第2ステージ進出を一気に決める。【益田一弘】