<セCS第2ステージ:巨人6-2中日>◇25日◇第4戦◇東京ドーム

 セ・リーグ覇者の巨人が中日を3勝1敗1分け(リーグ優勝1勝アドバンテージ含む)で下し、02年以来31度目の日本シリーズ進出を決めた。8回、アレックス・ラミレス外野手(34)が左翼席へ決勝2ランを放った。昨年、クライマックスシリーズ第2ステージで3連敗で敗退した中日に雪辱。原辰徳監督(50)が8度宙を舞った。11月1日から日本シリーズ(東京ドーム開幕)で西武と対戦。02年には西武に4連勝し日本一を飾り、その再現で頂点を目指す。

 誰からともなく声がかかった。原監督を中心に、グラウンドの中央に選手が群がってきた。実は胴上げは日本シリーズで日本一になった時にしか、やらないはずだった。「予定になかった。選手たちに感謝です」。選手への愛情は十分すぎるほど伝わっている。選手を「宝物」と表現する男が、たくさんの愛情を受け、リーグ優勝と同じ8度、宙を舞った。リーグ優勝時と違ったのは、勝利インタビューであふれ出した涙だった。

 涙の分だけ、悔しさが詰まっていた。CSの相手が昨年に続き中日に決まった時だった。昨年は3連敗で敗退。今季の対戦成績も10勝14敗。CSに備え宮崎合宿から帰京し、空港から帰宅する車中で中日の勝利をラジオで聞いた。選手や球団関係者が、相性のいい阪神との対戦を望んでいることも知っていた。

 原監督

 ドラゴンズを倒さなければ、セ・リーグを制覇したとは言えない。昨年の優勝の喜びも一瞬で消えた。今季も負け越しているんだから。

 中日との対戦へ多くを語らなかったが、勝負師の血は静かに猛(たけ)っていた。8回、ラミレスの決勝2ランの後、無死一、二塁から坂本に送りバントのサインを出し、鶴岡の適時打でダメ押し点を奪った。9回にはCS大不振のクルーンを登板させ、三振で締めた。前夜は1点リードの9回、先頭中村紀に死球を出したところで交代させた。結局、その走者が同点をホームを踏んでいた。

 試合後、クルーンを監督室に呼んだ。「9回のマウンドにいく資格がない」とクルーンは泣いたが、原監督は「そんなことはない。明日も9回のマウンドで投げてもらう」と話した。その言葉にうそはなかった。「精神的なもの。短期決戦は冷徹になることも必要だけど、本当にダメなのかを見極めるのが大事だと思う。この後の戦いもあるんだから」。優しい言葉だけでなく、日本シリーズを見越し、冷静さも兼ね合わせた判断だった。

 原監督

 選手たちが強い選手になった。本当によく戦ってくれた。昨年、負けた悔しさを持って挑んでくれた。昨年は悔し涙だったけど、今年はうれし涙だった。中日は超えなければいけないチームでした。

 1勝のアドバンテージがあったとはいえ、3勝1敗1分けで中日へのリベンジを果たし、02年以来の日本シリーズ進出を勝ち取った。愛情を持ってはぐくんだチームは、確かに強くなった。監督1年目の02年日本シリーズでは、松坂(現レッドソックス)擁する西武を4連勝で下し日本一。日本球界最高峰の舞台で、再びその強さを証明する。【小島信行】