ソフトバンク和田毅投手(27)が8日、12月中旬に極秘の山ごもり合宿でパワーアップする計画を明かした。大分県の某所で山道を走るだけの自主トレで、1日最低20キロがノルマの濃厚な内容。契約する個人トレーナーが衛星写真を用いたソフトを使い、坂路コースを調査中だ。合宿前後も福岡と佐賀の県境を走る予定で、今季逃した2ケタ勝利へ足元を固める。

 和田が駅伝部ばりの強化合宿を張る秘密基地は、専属契約を結ぶ土橋トレーナーによれば「テレビの電波も届きにくい」という大分県の山岳地域にある。家族を福岡に残し、1人で山道を駆け上がる。和田は「ただ走るだけ。おいしいご飯を食べて寝て、走る。坂道の方が足を上げないといけないし、きつい練習ができますから」とあえて険しい道のりを自らに課した。

 12月の各種イベントの合間に宿泊施設に泊まり込む5日前後の合宿。ランニングコースは衛星写真を用いたソフト「グーグルアース」を使って選定中だ。土橋トレーナーは「地図の上で緑色が濃くなっているのは山が急斜面ということ」とアップダウンのきつい道を優先する。1日20キロで合計100キロが最低ラインだ。

 「山ごもり」前後には福岡と佐賀の県境にあり、標高1000メートル前後の山が連なる脊振(せぶり)山地を週3~4回、走ることも検討中だ。昨年12月にも走った和田は「気付いたら佐賀県という看板が出てきて、達成感がありました」と振り返る。2県をまたぐ坂路調整で屈強な下半身に磨きをかける。

 今季はオフに受けた左ひじ手術の影響で理想の調整ができないまま、シーズンに突入。完投も「春先はしたくてもできなかった」状態で、本来の投球フォームを取り戻したのは8月ごろだった。8勝に終わり入団からの2ケタ勝利は5年連続で止まった。来季は「2ケタは通過点」とその奪回はもちろん、「いつも完投するつもりで投げていますが、入団した年の8試合が最高ですから」と初の2ケタ完投も意識した。

 宮崎・秋季キャンプでは通常メニューに300メートル走を20本追加。高山投手コーチが「1軍トップの選手があれだけ取り組むとほかの選手にも刺激になる」と話すように、練習態度でチームを引っ張る和田の姿勢は頼もしい限り。すべては自分のレベルアップとV奪回のため。山を駆け続けた先に、5年間見ていない頂が待っている。【押谷謙爾】