プロ21年目の「赤ヘル1年生」は初心で勝負する。広島の沖縄合同自主トレが25日、沖縄市内の沖縄市野球場で始まった。横浜を戦力外になり、昨年11月に広島入りした石井琢朗内野手(38)もチームに初合流。午前中にナインとともに広島から空路で沖縄入りすると、午後からティー打撃などで汗を流した。通算2307安打を誇る名球会打者も「ベテランだからとか関係なく、緊張感がある」と初々しい表情。気分一新して、レギュラー奪取を狙う。

 誇りを賭けた戦いはすでに始まっていた。雪の舞う夜、石井の心は早くも赤く燃えていた。前日24日に自宅のある都内から単身で広島入り。この日の朝、ナインが沖縄へと旅立つ広島空港に向かった。プロ2年目の小窪を見つけると、自ら歩み寄って握手。チームメートとともに、一致団結して戦う。プロ21年目のベテランが初心に立ち戻った。

 石井

 昨日(24日)広島に入ってきた時点で、気持ちを切り替えました。ホント、いよいよだなと…。久しぶりに昨日の夜は緊張してね…。朝、みんなと顔を合わせてね。(広島から出発した理由は)みんな広島から行くんだから。「郷に入れば、郷に従え」です。

 名声を築き上げた横浜時代は、プロ通算2307安打をマークした。98年には日本一に導いた…。そんな球界屈指のリードオフマンも、新天地では栄光をかなぐり捨てる。自宅に近い羽田空港から沖縄入りせず、あえて本拠地広島を経由した「回り道」に、意気込みの強さが表れていた。

 機敏な動きは健在だ。沖縄合同自主トレでは存在感を示した。この日は遊撃の定位置につき、ノックを受けると、球が吸い付くようなグラブさばきを披露。正確な送球も見せつけた。ティー打撃、腹筋強化など初日から3時間を超える意欲的な始動だ。節目の1日を終えて、夕食後には苦笑いを浮かべて振り返った。

 石井

 疲れた…。ベテランだからとか関係なく、緊張感がある。すごく気を使う。流れやしきたりもよく分からないので…。自分のやるべきことをやっていこうかなと思います。

 数々の修羅場を経験したヒットマンも、心はフレッシュな「カープ1年生」だった。それでも、レギュラーへの意欲を問われると「やるからにはね」と語気を強める。何より好きな野球を続けられる喜びにあふれる。まさにゼロからの再出発。広島での大きな挑戦が始まった。【酒井俊作】

 [2009年1月26日10時29分

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