<ヤクルト8-4中日>◇8日◇神宮

 鮮やか、オレ流速攻!

 中日が今季初めて1、2、3番の3連打で初回に3点を先制した。先頭荒木が投手強襲安打で出塁し、続く井端中前打で一、二塁。ここで森野将彦内野手(30)が右中間スタンドに2号3ランをたたき込んだ。逆転負けで開幕からの連勝は4で止まったが、落合竜のキーマン3人が想定通りに機能。9日、ヤクルトにやり返し、開幕2カード連続勝ち越しを決める。

 今季初の敗戦にも光明を見つけることができた。まだ神宮の空が薄明るかった初回、鮮やかな速攻がさく裂した。口火を切ったのは1番荒木だ。ヤクルト先発木田から強烈なセンター返し。打球は木田の左手首を直撃する強襲安打。続く井端は打ち上げたが、中堅青木の前にポトリと落ちる安打で一、二塁とした。

 ここで打席に入ったのは3番森野。「初回に走者がいたのは今季初めて。何かあるなと思いました」。アクシデントの後、落ち着かない木田のすきを見逃さなかった。初球、内角高めに浮いた直球をたたくと右翼席へ2号3ランとなった。07年に両リーグ最多8本の3ランを放ち「ミスター3ラン」を襲名した男が久々の名目躍如。開始からわずか7球の先制劇だった。

 左足故障が完治しないまま開幕を迎えた荒木はこの日まで17打数1安打、打率0割5分9厘。井端、森野も2割1分4厘と不振だった。機動力野球を掲げる今季は1、2番の出塁と3番森野の臨機応変な打撃がカギを握る。それだけに今季初めて3人がつながったことにも大きな意味があった。

 「普段、打たない3人が打ったから負けたんじゃないですか。まあ、明日ですよ」。森野には冗談を言える余裕があった。「きょうのヒットをきっかけにしたい」。どん底だった荒木も前を向いた。そして、今季初めて敗軍の将となった落合監督も薄く笑っていた。

 「負ける時はこんなもん。これから使える者と使えない者が見えてくる。まだ何試合なんだ?」。

 落合監督はチームに不安感を与えないため負けた時ほど笑顔に、冗舌になる。ただ、この日の笑みは種類が違った。プレーボール直後に見た3連打。打つべき男たちが打った。残り139試合。長い、長いペナントレースを見据えた上で目先の勝敗に勝る収穫があったのだろう。【鈴木忠平】

 [2009年4月9日10時49分

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