<中日6-3ヤクルト>◇12日◇岐阜

 中日トニ・ブランコ内野手(28)の太い腕とバットが白球をしばき上げた。3回1死一、二塁。ヤクルト先発一場のスライダーはピンポン球のように飛んでいった。岐阜・長良川の夜空に舞い上がった打球は左翼スタンドの屋根の上に着弾するとそのまま場外へと消えていった。

 「ちょっとバットの先っぽだったから、あそこまで飛ぶとは思わなかった」。

 長良川球場の関係者によれば91年の開場以来「場外ホームランは見たことがない」という。“同球場初”となる150メートル級場外弾は何とバットの先端だった。恐るべき怪力を見せつけた7号3ランで5-0とヤクルトを突き放した。

 ブランコの「仰天弾」は今月に入って3発目だ。7日広島戦の4回、低めの球をすくい上げると打球はナゴヤドームの左翼定位置上約50メートルの「サテライトスピーカー」を直撃した。97年の営業開始以来、初の認定本塁打となった。この衝撃的な映像はニュースとなって全国に流された。

 さらに翌8日巨人戦では東京ドームの左翼最上部の看板を越える150メートル弾を放った。巨人原監督は「あれはオレが見た中でもベストのホームランだ」と素直に感動したほどだった。その強烈なインパクトに球団営業部では「仰天弾Tシャツ」作製などの販売戦略を検討し始めた。その矢先に飛び出した場外弾。ブランコの怪力はチーム内だけでなく、ファン、対戦相手にも完全に認知された。

 「なぜそんなに力が強いのか?

 確かに肉は大好物でよく食べるけど、神様が与えてくれた体のおかげだよ」。これでチームトップの24打点。オレ竜の新4番は一時の不振を脱出した。ブランコの特大弾にはチームを浮上させる勢いがある。【鈴木忠平】

 [2009年5月13日10時39分

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