<横浜1-7日本ハム>◇29日◇横浜

 優等生ルーキーが「ハマの番長」を、失意のどん底へ突き落とした。日本ハム大野奨太捕手(22)が、横浜の夜空にメモリアルな放物線を描いた。7回1死三塁。カウント0-1からだった。外角高めスライダーを、強引に振り切った。「最低でも犠飛と思っていたけれど、入って良かった」。謙虚な思いとは裏腹な、左中間席中段へ飛び込む豪快なプロ1号。パ・リーグ新人で今季一番乗りと、付加価値十分の1発だった。

 伏線があった。2-0とリードの6回。村田に中堅へ特大ソロを浴びた。村田には2日前のカード初戦でも被弾。大野は欠場していたが「ホームランを打たれたことに悔いがあった」と猛省していた。そのモヤモヤをプロ23試合、54打席目での記念弾へとぶつけた。27日には、昨季は主将を務めた東洋大が東都リーグで戦後初の5季連続優勝。「偉大な記録をつくってくれたので、OBも頑張ろう」と、2つの発奮材料が一振りに宿した。

 開幕から1軍に抜てきされ、捕手出身の梨田監督らから英才教育を受けている。大器と見初めた稲葉が、遠征先などでたびたび食事に誘い、プロとしての心得も伝授。将来的にチームを背負う逸材として成長の日々を送っている。この日は昨季の中田とともに、ドラフト1位コンビで競演した。「テレビで見ていた存在だった」という、三浦から刻んだ節目。大野は通過点を、また1つ軽くクリアした。【高山通史】

 [2009年5月30日10時30分

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