<中日3-5西武>◇8日◇ナゴヤドーム

 中日の主砲トニ・ブランコ内野手(28)が、リーグ単独トップとなる16号本塁打を放った。西武4回戦(ナゴヤドーム)の3回、西武先発岸からバックスクリーン左へ運んだ。執拗(しつよう)な高めのストレート攻めを跳ね返し、相手に「死角なし」を印象づける1発。チームは逆転負けで連勝は4でストップしたが、B砲の進化は止まらない。

 終盤の追い上げも実らず、今季初の5連勝はならなかった。西武に悔しい逆転負け…。チームの進撃は小休止した中でも、竜の4番は進化の証しを見せつけた。

 3回だ。ブランコが、狙いすましたように西武岸の投じた136キロの高めストレートをとらえた。打球はバックスクリーン左へ一直線。「完ぺきだった。結果が出ているのはすべて神様のおかげだよ」。自画自賛の16号先制ソロ。同僚和田を離しリーグ本塁打王争いで単独トップに立った。

 意地の1発だった。初回1死一、三塁で迎えた第1打席、西武の岸-銀仁朗のバッテリーは徹底して「高めの直球」で攻めてきた。初球は空振り。2球目はまったく同じ球を打ち上げて二飛にたおれた。相手は明らかにブランコの弱点と確信していた。その術中にはまってチャンスを逃した。

 交流戦が2まわり目に入ってからの3試合、打率は2割1分4厘と下降気味だった。猛威を振るうB砲に対してパ・リーグ各球団も研究を重ねてきた。その結果、高めの直球で攻められることが多くなった。前回対戦の5月19日(大宮)に2本塁打を放った岸もこの日は“弱点”をついてきた。本塁打はやや球威の落ちる球だったとはいえ、高めの直球をはじき返したことに大きな意味があった。

 ただ、試合後の4番に笑顔はなかった。3点を追う7回、2点差としてなお満塁の場面、右腕岡本の前に空振り三振。カウント1-2から高めの直球はファウルしたが、直後の低めのスライダーにバットが出た。高低の攻めに屈した。逆転を期待したスタンドから大きなため息がもれた。

 この日、発表された球宴のファン投票中間発表では一塁手部門で広島栗原に次ぐ2位だった。「そうか…。出られれば頑張るし、出られなければ休むよ」。ナゴヤドームの「天井直撃弾」、左手1本でスタンドまで運んだ怪力弾など観る人の度肝を抜く長打力で人気も上昇。同時に期待も大きくなる。ファンにこたえるためにも、チームを勝利に導くためにもB砲は進化を続ける。【鈴木忠平】

 [2009年6月9日9時43分

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