<オリックス2-6日本ハム>◇26日◇スカイマーク

 インフルエンザ禍に見舞われてから白星に見放されていた日本ハムがようやく勝った。6-2でオリックスを下し、連敗を6でストップした。1点差の2回2死一塁、8番鶴岡慎也捕手(28)からの4連打で一挙4点を奪い逆転。この試合の6得点、1本塁打で昨年のチーム総得点533、総本塁打82に106試合目で早くも並んだ。新型インフルエンザ集団感染後から迷い込んだトンネルを抜けだし、敗れた2位ソフトバンクとのゲーム差を4に広げた。

 一番の良薬を、ようやく手にした。日本ハムに10日ぶりの白星が舞い込んだ。高校球児のような笑顔が、はじけた。病み上がりの糸井は、ギンギンになった。「勝ったよ~!

 勝ったよ~!」。裏声で、奇声を上げながらバスまでの帰路を闊歩(かっぽ)した。インフルエンザ禍を突き抜けた。梨田監督も「勝てばどんな形でもいい。勝てばね。長かったけれど…」と再び訪れた平穏な1日を、素直に喜んだ。

 苦しい時を支えた打線の2つの軸が、暗闇を切り裂いた。1点を追う2回、同点としなおも2死一、二塁。田中が右中間へ2点二塁打を放つ。中押し点がほしい4回には稲葉が、左中間フェンス直撃の適時二塁打で、白星へと引き寄せた。インフルエンザ感染5人を含む、コーチと選手計13人が離脱したが、フル稼働してきた若き選手会長とベテラン主将が、騒動に別れを告げた。

 事態は離脱者の数字だけでは推し量れないほど、深刻だった。稲葉も平熱の範囲内だが、通常よりも高い36度9分の状態がずっと続いていた。「自分もダルいというか、体がね…。でも、この状況で休むとか言ってられないでしょ」と、黙って強行出場を続けてきた。主力野手がチームを離れていく状況を考え、口には出せなかった。体にムチを打って3番を張り続けた思いが、やっと報われた。

 チーム内に、少なからず不協和音が生まれそうな時もあった。未然に空中分解を止めたのが、田中。隔離生活を送る選手へ連絡をし、状態を気遣ったという。自らも20日楽天戦で右足首を痛め、欠場危機もあったが志願出場を続行した。「いつかは連敗は止まると思ったけれど、いい形で止まった」。この日は2安打3打点。6回の3号ソロは、今季のチーム533得点目で、82本塁打目。早くも、いずれも昨季の成績に並ぶ節目の一打が、最高の快気祝いになった。

 梨田監督は「これでノッていけるような気がする」と再スタートに手応えを深めた。自身が感染しなかったが、周囲には「1週間が1カ月のように長く感じる」と漏らすほど、心が病んでいた。そんな時、25日に同い年で親交の深い、阪神真弓監督から携帯電話へ「お見舞い」の連絡をもらった。ともに苦しい時期を戦う同志からの心遣いに「ありがとうございます。そちらも頑張って」などと返したという。気持ちを新たにした後、久々の歓喜の瞬間が訪れた。2年ぶりのパ・リーグ頂点へと向かう最大の難関を、まずは越えた。【高山通史】

 [2009年8月27日10時8分

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