広島緒方孝市コーチ(40)が初カミナリを落とした。18日、マツダスタジアムで行われた秋季練習で、走塁練習中に気の抜けたプレーを見せた選手を一喝した。実戦的な練習を数多くこなすことを掲げている新生野村カープ。個々の選手の意識が追いつかなければ、1軍には生き残れない。これも野村流愛のムチだ。

 緒方コーチが怒鳴った。投手がバントし、一、二塁にいる走者が次塁へ進む走塁練習中だ。2軍から秋季練習に参加中の5年目田中彰内野手(26)に突如カミナリが落ちた。「集中してやれ!」。

 同コーチは「こういう練習をするぞと言っていたのに、やるべきことをやっていなかった」と激怒の理由を説明した。送りバントで次塁へ滑り込んだ後もそれで終わりにせず、回りの状況を必ず確認するように伝えられていたが、それを怠ったことが原因のようだ。

 野村監督も「(1軍入りを)争わないといけない選手が、同じ意識でやっていては困る」と厳しく指摘した。田中は「何も言うことはありません…ノーコメントです」とだけ話し、肩を落としてタクシーに乗り込んだ。

 これも野村流の愛のムチだ。26日からの秋季キャンプ(宮崎・日南)では実戦練習を数多くこなすことを明言しているが、この日約5時間行われた秋季練習でも、その“予行演習”として投内や内外野連係、外野のクッションボール処理などブラウン前監督体制下ではあまり見られなかった実戦的なメニューを数多くこなした。この日の練習をクリアできないようなら、より実戦的になる秋季キャンプで振り落とされ、来春キャンプの1軍メンバーに食い込むことなどできない。コーチ陣の厳しい言葉も、全体の底上げ、選手個々の意識変革を願えばこそだ。

 投げる相手とは別の選手の名を呼ばせてボール回しさせるなど、新指揮官が米球界視察などで得た知見を元に、練習メニューにもバリエーションを持たせた。ハードな練習の中にもアイデアを盛り込み、飽きないように工夫する。この日、Tシャツながら「背番号77」を披露した野村新監督。そのイズムを、着々と浸透させつつある。【高垣

 誠】

 [2009年10月19日11時45分

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