王が動いた。ソフトバンク王貞治球団会長(69)が24日、マリナーズを退団した城島健司捕手(33)に対し、獲得レース参戦を正式に伝えた。この日、福岡市内の料亭で2人だけの会食。数日前からプライベートな食事会を打診していたが、阪神が前日23日に初交渉を行い、ソフトバンク球団も意見を一本化させたことで、正式な交渉打診の席となった。金額提示こそなかったが恩師のラブコールに、城島も「光栄」と語った。虎にリードを許し続けたソフトバンクが、城島ホークス復帰へ逆襲開始だ。

 愛弟子のハートをわしづかみにした手応えがあったのだろう。王会長の口調は自然と熱くなっていった。約3時間に及んだ、城島と2人だけの濃密な会食を振り返った。

 王会長

 (城島)本人も本心を話してくれた。結論は出てませんが、こちらも彼もなるべく早く結論を出したいというのは一致しています。もともと(城島は)こちら(九州)で生まれ、こちらで育った。(九州への)思いが強いのは十分に分かっています。結論を出すのは彼。思いの丈は話しました。一緒にやった人間として通じるところがあった。僕とミスター(巨人長嶋氏)じゃないが、2人だけじゃないと分からないところがある。

 15年前。ダイエーの指揮官として就任したばかりの王監督(当時)は、この日と同じように動いていた。94年度ドラフト。大学進学を打ち出していた城島を強行1位指名。王監督が高校に出向くなど直接出馬し、入団にこぎつけた。ダイエーで3度の優勝や、WBC優勝など結びつきは深い。この日、福岡市内の料亭で会食は午後6時からだった。だが、約束の時間の30分以上も前に現地到着した王会長がいた。里帰りした息子の到着を楽しみに待っていた。

 金額提示こそしていない。それでも、王会長の「出馬」こそが、ソフトバンクの何よりの誠意でもある。城島は代理人を通じ、正式なラブコールを受けたことを認めた。

 城島

 (夕食の)席上、王会長にソフトバンクから正式な獲得の意思があると伝えられました。古巣のホークスでもあり、恩師の王さんからこのような意思を伝えていただいて光栄に思います。

 王会長は当初不出馬を打ち出したが、朝令暮改となる猛アタック。前日23日、先行してきた阪神は福岡に乗り込んで城島と初交渉していたが、一気に逆襲をかけた格好だ。城島本人も地元九州でプレーすることに強い思い入れを持っていると言われ、恩師の言葉が心を揺さぶっても不思議ではない。

 王会長は会食に出かける前にも意気込みを示していた。「スタートは遅れたが、思いは負けない。九州を挙げてというより日本全国のホークスファンが望んでいる」。九州で育ち、極め、メジャーを経験した扇の要。鷹が、後れを取っていた虎との争奪戦で、巻き返しだ。

 [2009年10月25日11時56分

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