日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が、確実視されていた来季の開幕投手の座が白紙になった。プロ野球コンベンションが18日、都内で開催され、ダルビッシュは07年以来2度目のパ・リーグMVPを受賞、ベストナインにも選出された。式典に同席した梨田昌孝監督(56)はシーズン終盤のコンディション不良に配慮し、来季序盤で起用する方針を明言。3年連続で託している来季の開幕マウンドを回避させることを、早くも視野に入れた。

 ダルビッシュに、嵐の球春の予感が漂ってきた。プロ6年目を迎える来季、10年3月20日札幌ドームでのソフトバンクとの開幕戦。晴れのマウンドを回避する可能性がわずかながら浮上した。梨田監督は「それ(開幕投手)は関係なしに体を治すことが優先。トレーナーと話をしながら(まずリハビリを)ね。監督、コーチの意向は度外視していい」と大役を現時点で、白紙にする方針を明かした。

 リセットするため、思い切った構想を描いている。梨田監督は「今までずっとキチッ、キチッと投げてきたから」と話した。07年から2年間、シーズン200イニング以上登板。その間に国際大会出場もあり、オフも犠牲にしてフル稼働を続けてきた。その蓄積疲労が今季終盤の左臀部(でんぶ)痛などのコンディション不良の要因だった。

 今季は2度の離脱など、そのツケが出た形になった。オフの現在は「すごくゆっくりできている、これほどゆっくりできていることはない」とオーバーホール中心に過ごしている。日本シリーズ終了直後には右手人さし指の骨折まで判明。梨田監督は「これからまだ先がある」と豊かな将来性も考慮し、まず開幕投手の座を“返上”させる親心を見せた。

 ダルビッシュにとっても、不完全燃焼の1年になった。この日は自身2度目のMVPを受賞。プロ入り5年目以内で2度目は故稲尾和久氏、マリナーズ・イチロー(当時オリックス)以来3人目の快挙になったが、自己評価は厳しかった。「最後まで戦力としていなかったので。稲尾さんとかイチローさんほどの内容じゃないんで、それほど価値はない」。エースとしてシーズン佳境で戦列を離れた、率直な思いを吐露した。

 来季の完全復調の青写真を描くプランの1つが、開幕投手回避。ダルビッシュも自覚十分に、自分を見つめ直し、次なる目標へと目を向けた。「とりあえずキャンプに向けて体を治して、ファンの方を喜ばせられるような体にして、リーグ優勝とか日本一ができたらいい」。自身にふさわしい開幕投手の座はあきらめず、試練の冬へと向かう。【高山通史】

 [2009年11月19日10時54分

 紙面から]ソーシャルブックマーク