遊撃でもいける!

 中日荒木雅博内野手(32)が25日、元チームメートのカブス福留孝介外野手(32)から「友情ノック」を受けて、ナゴヤ球場での自主トレを打ち上げた。二塁から遊撃へのコンバートに挑戦するため、現役メジャーの打球を受けて沖縄キャンプ前に仕上げた。親友・荒木の鋭い動きに福留も太鼓判。ゴールデングラブ賞を二塁手、遊撃手と受賞すれば史上初の快挙となる。大きな目標に向けて親友の心強い後押しだった。

 午後3時、だれもいなくなったナゴヤ球場屋内練習場で「友情ノック」が始まった。遊撃の位置で構える荒木に、福留が打つ。詰まった打球を想定した当たりには全力でダッシュ。三遊間への深い打球にもしっかり追いつき、一塁へ送球した。2人だけの練習は約1時間、続いた。

 「今年はショートをやるのですべてを早めに仕上げたいと思っている。きょうは生きた球を打ってくれました。(福留は)もうでき上がっていますね」。

 荒木が頼み、福留が快諾した「友情ノック」。12年間、同じユニホームを着た戦友だからこそ実現した。95年のドラフト会議、中日はPL学園の福留を1位指名したが、抽選に外れた。当時7球団の指名を集めた福留の外れ1位として入団したのが荒木だった。それから3年後、福留は日本生命から逆指名で中日入り。同い年の2人は晴れてチームメートになった。繊細な荒木に、マイペースな福留は互いに励まし合いながら主力に成長。福留がカブスに移籍した08年以降も友情は続いている。

 そんな親友にノックを頼んだのには理由がある。今季、荒木は二塁から遊撃へのコンバートに挑戦する。横の動きが多く、送球距離も短い二塁手に対し、遊撃手は前への動きも要求され、送球距離が伸びる。質の違うポジションだけに荒木は打撃投手を務めるなど意識的に早く肩を仕上げてきた。そして沖縄キャンプへ行く前、総仕上げとして福留の打球を受けたかった。

 「今まで通り、二塁を守っていればそこそこできるかもしれない。でも野球選手として今以上になるには発想の転換が重要。例えば打ったら三塁に走るような。ショートをやるのはそういうきっかけにもなる。やるからにはゴールデングラブは絶対にとりたい」。

 プロ15年目の大転換。そんな荒木の目標の1つが6年連続で獲得しているゴールデングラブ賞だ。二塁手と遊撃手を連続受賞すれば史上初の快挙になる。成長著しい巨人坂本や阪神鳥谷などライバルはいるが、コンバート1年目から絶対にとるつもりだ。渡米前にノックしてくれた福留に対して初の栄誉を獲得することが1番の恩返しになる。【鈴木忠平】

 [2010年1月26日11時22分

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