ブーちゃんよ、やせるな!

 中日のドラフト3位中田亮二内野手(22=亜大)に元祖重量級プロ野球選手、ドカベンこと香川伸行氏(48=元野球評論家)が熱いエールを送った。現役時代、最大で130キロの体重を誇った香川氏は周囲の批判に屈せず、自分の特徴を生かすことの大切さを説き、子どもたちに夢を与える使命を託した。15日、亜大を卒業し、晴れてプロ野球選手としてスタートを切った中田亮は感激し、あらためて開幕1軍入りを誓った。

 香川氏は“現代のドカベン”誕生を予感しているようだった。まだ入団したばかりの中田亮について聞くと、まるで自分のことのように熱く激励した。

 香川氏

 彼のことは新聞などを見て、よく知っているよ。あの体でプロに挑戦しようっていうのは確かに僕以来じゃないかな。自分がプロで10年やった経験から言いたいのは自分を持つこと。本人が動ける体をつくれば、それがベスト体重なんだ。周りがやせろと言おうが、太っていても動ければいい。僕は現役を10年やったけど、細かったらもう何年かやれたとか、そういうことは考えたことがない。やせろという人が周囲にたくさんいても80キロに減量して結果が出なかった場合、だれも責任はとってくれない。逆に115キロでも動ければだれも文句は言わない。ただ、やせてる人が結果が出なくてもあまり言われないが、太っている人が結果が出なければ、すごくたたかれる。それは覚えておかないとね(笑)。

 現役時代、最大130キロを超えていた香川氏はマスコミや評論家などから厳しい指摘を受けたこともあった。その経験から中田亮に、自分を曲げてはいけないということ。そして、そのために「ウサギとカメ」のカメのように、努力をやめないことの重要性を説いた。

 香川氏

 僕はプロのキャンプに行ってすぐ「オレは間違っていたかもしれない」と思った。練習では体力面でみんなから遅れていた。周りが全員すごい選手に見えた。オープン戦でも1本もヒットを打てなかった。入団して3カ月間は「やっていけるのかな?」ということばかり考えていた。それでもキャンプでは遅れてもいいから、みんなについていこうと思った。僕は宿舎から球場まで走って通ったし、毎日、特守もやった。どんなに遅れても、途中で努力をやめないでやりきることが大事なんだ。そうすれば自然と体力はついている。じつは初めてヒットを打ったのは2軍の開幕戦だった。その時に初めて「やっていける」と思えた。それから10年やれた。最初は遅くてもいい。中田くんだってできるはずだ。

 中田亮は現在2軍教育リーグに出場中だが、ファンの間では「ブーちゃん」として抜群の人気を誇る。現役時代、CMに出演するなど人気者だった香川氏はそんな中田亮にプロとしての個性、ファンに夢を与えることの大切さを訴えた。

 香川氏

 今のプロ野球を見ていると、似たような選手ばかり。もっと個性が必要だと思うな。プロの世界は見られてナンボなんだから。太っていることはそれだけでお客さんに見てもらえる特徴があるということ。「オレは他人にないものを持っている」と思えばいいんだ。スタイルがいいやつだけがプロ野球選手じゃない。最後に僕から中田くんにお願いがある。子どもたちに、太っていても野球ができるんだと思わせてほしい。それが僕の仕事だったし、これからはおまえの仕事なんだ。陰ながら応援している。頑張れ。

 プロ野球ファンの記憶に強烈に刻まれたドカベンは、かつての自分に中田亮を重ね、成功を願っている。プロの扉を開けたばかりの中田亮にとって時代を超えたエールは何よりの励みになったはずだ。

 [2010年3月16日11時52分

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