<阪神6-3横浜>◇2日◇甲子園

 くぼたぁ!

 くぼたぁ!

 くぼたぁ!

 ファンが心から、久保田智之投手(29)の名を叫ぶ。8回のマウンドに向かった鉄腕は、心地いい歓声を全身で受けとめた。15分前のブーイングは、大歓声に変わっていた。それでも、百戦錬磨の男の顔が緩むことはなかった。「疲れました」。イニングをまたぎ力を出し切った34球だった。

 出番は1点リードの7回1死一、二塁。ざわつくスタジアムを、投球で見返した。代打金城を1球で遊飛に打ち取る。内川にはフルカウントまで粘られたが、最後は153キロ直球で空振り三振に仕留めた。一気に、盛り上がるスタンドとは対照的に、久保田は表情を変えずゆっくりベンチに帰った。

 見せ場はマウンドだけじゃなかった。直後に打線が爆発し、7回2死一、三塁で打席が回ってきた。城島が盗塁し二、三塁の好機。真田の146キロをひっかけた。三遊間に打球が転がると、一塁まで全力疾走をしていた。「ただ、なんとなく。打球が飛んだところが良かった」。ともに04年5月4日広島戦(広島)以来、2312日ぶりとなる安打と打点を記録した。

 2日は長女の5歳の誕生日だった。忘れられない思い出がある。06年6月23日。プロ野球選手としては致命的な“事故”にあった。ベビーカーから落ちそうになった愛娘を助けようと差し出した右手を地面に打ちつけ骨折した。2カ月間戦線を離脱。あれから4年。娘の存在を励みにはい上がってきた。1度は失いかけたポジションを、今でも守り続けている。

 8回に1点を失った。だが、その1点が藤川に18日ぶりのセーブを呼び込んだ。「本当は点はやりたくなかったけど、何とか続けられるように…。あ、点をやらないようにがんばります」。優勝の味を知る男が存在感を見せつけた。【鎌田真一郎】

 [2010年9月3日10時54分

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