<楽天4-14西武>◇3日◇Kスタ宮城
これぞ究極の“おかわり弾”だ。西武中村剛也内野手(27)が6月4日以来の1発を放った。しかも右ひじ手術でリタイアする前からの13号、14号に続いて、15号もグランドスラム。しかも満塁弾シーズン3連発という史上初の離れ業でチームを3連勝に導いた。1軍復帰後、不振に苦しんでいたが、完全復活への第1歩となるか-。
悠々とダイヤモンドを周回する楽しみさえ、忘れかけていた。ベースを蹴るたび、中村の表情が緩む。極度の不振にあえいだ分まで、喜びが全身を駆け抜けた。代名詞でもある本塁打は91日ぶりで、故障復帰後は初めて。「ちゃんとバットに当たるのも久しぶり。打てなくて悩んで、ふがいなくて悔しかった」。気をもんだ西武ベンチやファン、誰より本人が待ちわびた1発に、心の底から安堵(あんど)感がにじんだ。
派手に決めた通算10本目の満塁弾は、足かけ5カ月で3本連続という離れ業だった。「逆にそれ以外は打ってなかったことが問題」と反省したが、5月25日広島戦の13号から、6月4日ヤクルト戦の14号。戦線離脱で間隔は空いたものの、復調を告げる15号と、すべてがグランドスラム。強烈なインパクトで、長いプロ野球の歴史に名を刻んだ。
責任を感じていた。8月25日に1軍昇格した後、26打数3安打15奪三振。直球に振り遅れ、ボール球を振らされる場面が目立った。6月に手術した右ひじは復調途上で、まだ痛みは残る。「1軍にいる以上は関係ない」と言い訳しないが、4番降格、スタメン落ちの屈辱を味わった。楽天3連戦の結果次第では、2軍落ちの可能性もあった。2年連続本塁打王のプライドは、崩壊寸前だった。
「打てないと考えが悪い方向にばかりいって。来た球をシンプルに打とうと思った」。2戦ぶりに先発復帰した1打席目、迷いなく振り抜いた。楽天長谷部の乱調で先頭から4連続四球で先制し、なおも1回無死満塁。制球に苦しむ左腕のカウント球を待った。絶好の真ん中スライダーを冷静に、弾丸ライナーで左翼席へ運んだ。打線爆発を呼び込み、2回まで10得点。主砲として長く果たせなかった仕事ができたことで、喜びはさらに増幅した。
苦しい時、声をかけてくれる言葉が身に染みた。わらにもすがる思いで、アドバイスを受ければ謙虚に実践した。「平尾さんに道具を一新しろと言われて今日からバット、スパイク、手袋を新品にして、御利益がありました」と声を弾ませた。3月には自打球で右目眼窩(がんか)底を骨折。故障に泣かされた今季の個人タイトルは絶望的だが、支えてくれた仲間と2年ぶりのV奪回が今は使命だ。
慢性的な痛みの原因だったひじの遊離軟骨は「これくらいありましたよ」。指先で示した大きさは、1センチ強もあった。手術で取り出した骨は自宅に保管してある。「これほど長く野球を離れたことはなかった」という期間を、いつまでも忘れないために。楽天に大勝して首位を守り、2位と1・5ゲーム差。激しさを増す優勝争いに欠かせない男が、天王山の9月に入ってようやく目覚めた。【柴田猛夫】
[2010年9月4日8時32分
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