<オリックス2-6ロッテ>◇25日◇京セラドーム大阪

 さらりとやってのけた。ロッテ西岡剛内野手(26)が、ダブル快挙を達成した。オリックス21回戦で史上5人目となるシーズン200安打を記録した。3安打を放ち今季201安打。パでは94年のイチロー以来、内野手、スイッチヒッターでは初の200安打をクリア。さらに1試合3安打以上は今季27度目で、96年のイチローのプロ野球記録を抜いた。

 きりっとした目から柔らかい笑みがこぼれた。4回2死一、三塁、200安打に王手をかけた第3打席。左打席で深く息をつく。金子千の2球目のスライダーをとらえ、低いライナー性のクリーンヒット。一塁ベースを回ると歓声が響き渡り、控えめに帽子を取って応えた。記念すべき瞬間は「全力でやっていたし、集中していたので」と、球種も分からないほど神経をとぎすましていた。

 スイッチヒッター初の200安打は、努力のたまものだった。プロ入り2年目の04年から両打ちに挑戦。もともと左打ちだが「(1年目に)左投手が全然打てなかった」との理由から、当時の高橋慶彦打撃コーチ(現2軍監督)から両打ち転向を勧められた。本来は右打者が俊足を生かすために両打ちに転向するのがほとんどで、まれなケース。そして「野球人生のオヤジだと思っている」と心酔する同コーチと練習漬けの毎日が始まった。

 試合後も最後まで居残り特打を繰り返し、翌05年には1軍のレギュラーに定着。昨年までの6年間、二人三脚で練習に励んできた。「つらいことも言われてきたし、慶彦さんも言いたくないと思ってることを言ってくれた。育ててもらったし感謝している」と感慨深げに振り返った。24日には師匠が指揮を執る2軍が4年ぶりにイースタン・リーグ優勝。その翌日に偉業を達成。「2軍は勝敗よりも内容を重視するところだし、慶彦さんはすごいなと思う。この結果を喜んでくれると思うし、それが恩返しになる」と離れていても師弟関係は厚かった。今季から就任した金森打撃コーチの「引きつけ打法」が加わり、より進化した。

 6回の第4打席では右打席で、チェンジアップに右ひざをつきながら左前に運ぶ技ありの一打を放った。日本新記録となる27度目の猛打賞も難なく達成。それでも「個人の記録は僕1人心の中で喜べばいいこと」と控えめだったが、2つの記録を左と右の打席で達成してみせた。

 次なる目標は、94年にイチローが樹立した年間最多210安打の更新。残り4試合で9本と不可能な数字ではない。それでも「送りバントや四球を選ぶのもチームに貢献することだと思っているので」とCS進出へ向け、勝ち続けることを目標とする。猛打賞26度目で並んだ時点では、イチローから「はよ、抜けって。抜いて大喜びしろ」と辛口エールを送られた。そして抜いてみせた。今度はシーズン安打数で「イチロー超え」をやり遂げそうな雰囲気がある。【斎藤庸裕】

 [2010年9月26日8時33分

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