プロ野球ドラフト会議が28日、都内のホテルで開催された。

 西武渡辺久信監督(45)が2年連続で強運ぶりを発揮した。ドラフトで1位指名した早大・大石達也投手(4年=福岡大大濠)は6球団が競合したが「ワセダカラー」のえんじのパンツをはいた験担ぎも実り、見事に当たりを引いた。昨年は6球団が競合した雄星を引き当てた右手で人気NO・1右腕を射止め「先発として、プロ野球界のスーパーエースに育てたい」と熱いメッセージを送った。

 ドラフト1番人気を引き寄せる“ゴッドハンド”は今年も健在だった。渡辺監督は封筒の中身を確認するとまず胸をなで下ろし、すぐさま両手でガッツポーズをつくった。「本当に信じられない。何か、怖いです」。声が心なしか震えていた。6球団の競合は、雄星を引いた時と同じ。しかし昨年は最初にくじを引いたのに対し、今年は最後。「何とか残っていてくれと祈っていた」と念を送り、昨年と同じ右手で1つしかない封筒をつかんだ。残り物には確かに福があった。

 チームは左投手の補強が急務で、東京ガス・榎田を一本釣りする案もあった。それでも「オレの意向?

 それもある。今年ではNO・1。ただ速いだけじゃなく、真っすぐで空振りが取れる」とボールの質にほれ込んだ。験担ぎで「もろにワセダカラー」というえんじのパンツをはいてドラフトに臨むなど前日に競合覚悟の指名を決めていた。この日、強運を発揮した右手には数珠がはめられていた。CSファーストステージ敗退後、一人旅に出掛けた際に立ち寄った長野・善光寺で購入したもの。来季の巻き返しへ願がかけられていたが、望み通りの即戦力ルーキーを運んできた。

 昨年は抽選直後のインタビューで雄星に「運命を感じています」と語りかけた。今年は何を感じているかと聞かれると「衝撃です」と笑った。予期せぬ幸運に面を食らいつつ、今後のプランははっきり描いていた。「先発で考えている。ピッチング同様スケールが大きくて息の長い、プロ野球界のスーパーエースに育てたい」と大学時代はクローザーだった大石の先発転向を明言。「2日連続で4イニング投げたり、そういうタフさはある。それくらいのスケールをもってる」と適性に太鼓判を押す。

 雄星に続く大物ルーキーの入団。うれしい一方、悩みもある。「指名できてラッキーだけど、(育てる)責任もあるなと」と正直な心境を吐露した。今季チーム防御率はリーグ最下位の4・19。ルーキーとはいえ、大石への期待は非常に高い。目指すは自身の現役時代と同じ右の本格派、先発完投型のエース。涌井、岸らと投手王国を築く日も遠くないかもしれない。夢は膨らむばかりだ。【亀山泰宏】

 [2010年10月29日8時39分

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