【ホノルル(米ハワイ州)13日=倉成孝史】「王の目」が光り続ける。ソフトバンク王貞治球団会長(70)が、2月の宮崎キャンプに長期参戦することを明かした。08年オフの監督勇退後では最長となる2週間ほどの視察を予定。FAで新加入した内川、細川を始め、3軍制を導入するにあたり獲得した育成選手らの動きをチェックする。編成部門のトップに立つ王会長も選手とともにグラウンドで戦う。

 王球団会長が、悲願の日本一へ向けて先頭に立って戦力分析を行う。自身が交渉にも出馬し獲得した内川ら新加入選手を、来春キャンプで、くまなくチェックする。

 「日程はまだ調整中だけど(キャンプの)前半の半分は行くつもりです。今回は細川と内川もFAで入った。細川の場合はキャッチャーだからあれだけど、内川に関しては適性も見ないといけない」

 08年オフの勇退後は、秋山監督への配慮もあり現場への介入をあえて控えた。だが3位に終わった09年は、秋季キャンプを初視察。当時育成枠だった左腕山田の才能を見いだし、開花させた。その後のキャンプでも、1軍のみならず2軍の若手選手にも打撃指導などを行った。それでも期間は、1週間程度。2週間のキャンプ視察は、今季惜しくも逃した日本一への並々ならぬ思いにほかならない。

 「現場が勝つためのアシストをするのが僕らの仕事」

 編成のトップとして、今オフはFAでの大型補強を成功させた。さらに、来季からの3軍制に備え育成ドラフトで5選手を獲得。また横浜を戦力外になった大西と、阪神を戦力外になった大城も育成枠で獲得した。

 「育成の人がだいぶ入ったからね。今まではあまりやってこなかったけど、補強だからね」

 育成枠では、俊足や打撃力など一芸に秀でた選手を獲得した。移籍だけに頼らずに、自前でその才能を伸ばし1軍に送り込むことでチーム力を強化する狙いがある。「どこを見ていいかわからなくなるから」と、来春キャンプでは3軍選手への指導は控える考え。それでも「1軍に入ってこれそうな選手がいる、というのだったらね」と“第2の山田”の発掘にも踏み出す構えだ。

 内川をチェックし、ベテラン勢を励まし、若手を叱咤(しった)する。グラウンドに目を光らせるだけで緊張感が走る存在だけに、視察期間が長ければ長いほど「王の目」の威光は増す。

 「もう今の若い選手には関係ないよ。監督がしっかりしているし、コーチ陣がやるべきことをやってくれている。私は少しずつフェードアウトしていきますよ」

 言葉とは裏腹に、日本一への熱い思いが70歳の王会長をつき動かす。

 [2010年12月16日11時24分

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