持参したのは、携帯電話と財布だけだった。巨人の新入団選手が6日、川崎市のジャイアンツ寮に入寮した。注目の大物ルーキー、ドラフト1位の沢村拓一投手(22=中大)が、左手にバッグだけ持って登場。伝統ある球団の寮生活が始まることに「やっとこの日が来ました。早くジャイアンツ球場で野球がしたかった」と胸を躍らせた。8日からは新人合同自主トレに参加する。

 胸を張って記念すべき日を迎えた。沢村は数々の名選手を輩出してきた歴史ある寮に足を踏み入れると、「やっとこの日が来たかなと。この日を待ち望んでいました。早くジャイアンツの一員として、ジャイアンツ球場で野球がしたかったので」と、素直な気持ちを口にした。

 思い出の品は持ち込まず、裸一貫のスタートとなった。左手のバッグに入っていたのは財布や携帯電話など、日常生活で使用するもののみ。自分にとってのこだわりの品に関しても「特にないです」と即答。「家電(製品)は好きなんですけど、テレビや冷蔵庫も大学の寮から持ってきたし、特に買うものもありません」と興味を示さなかった。06年、同じくドラフト1位だった辻内は江川卓の直筆メッセージ入り色紙、09年にも大田が、高校時代につづった野球ノートを持参。この日も他のドラフト指名選手が、友人からもらった寄せ書き色紙や、メッセージ入りのノートなどを持ち込んだ。それは厳しいプロの世界で生き抜くための支えとなるもの。だが大物ルーキーには関係なく、求めていたのは、ただ野球ができる環境だけだった。

 部屋は、1軍で活躍が期待される選手に用意される2階に決定。3、4階とは違い、ユニットバスが完備するなど新人にとっては特別待遇となる。「救世主部屋」としても縁起がいい。引き継いだ部屋は一昨年までオビスポ(現日本ハム)が使用していた。“オビちゃん”と言えば09年、先発ローテの谷間で何度も窮地を救い、育成出身投手で史上初の勝利投手、日本シリーズでも白星を挙げ、7年ぶりの日本一に貢献した。「部屋で野球をするわけではないですし、野球だけを考えていきたい」とあくまでも無心を貫いたが、1年目の新人が救世主となれば、日本一奪回も見えてくる。

 8日からは新人合同自主トレが始まる。何にも頼ることはない。「とにかく勝てれば何でもいいです」と断固たる決意がある。過去の思い出も持ち込まず、まだ真っ白なプロ野球人生の道に、「巨人の沢村」を作り上げる。【斎藤庸裕】

 [2011年1月7日8時32分

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