右肩故障からの再起を期す阪神金本知憲外野手(43)が、“金本シフト”を解除して開幕に臨むことが8日、決まった。昨年はマートンら中堅手が左翼寄りを守り、カットマンの遊撃鳥谷も深い所まで追っていたが、今季は通常モードに戻す方針だ。すべては右肩の状態が良好な証し。元気なアニキが左翼に帰ってくる。

 甲子園での開幕前最終ゲームは、雨で流れた。今年初めて本拠地で左翼守備に就く予定だっただけに、確認したかったことも多かったはず。だが金本は、甲子園で守りにつかないまま開幕を迎える不安もどこ吹く風で、精力的に動いた。午後2時前に練習試合・オリックス戦の中止が決まると、室内練習場に直行。午前の練習でも2時間たっぷり汗を流したが、もう一丁お代わりだ。

 よほど状態がいいのだろう。熱のこもった打撃練習に加え、50メートルのキャッチボールで肩慣らし。そして外野の安打処理を想定したノックを志願した。

 前後左右の17本を軽快にさばくと、ステップを踏んで30~40メートル先のカットマン役に送球。「いい球が来てたと思います」。受けた伊藤トレーナーも納得の力強い球筋だった。晴れなら試合で演じていたはずの復肩デモ。真弓監督ら首脳陣は、“金本シフト”の解除を決定した。

 山脇守備走塁コーチ

 左中間(の打球)はちょっと(スタートが)遅れてもセンターが(捕りに)行くけど、(あらかじめ左に)寄ることはない。普通にね。

 昨年故障からの復帰後、マートンら中堅手は左翼寄りを守っていた。本来は金本への打球でも、右肩への負担を考えて中堅手が処理する方が良いとの判断だった。だが復活ぶりを見る限り、その必要はなくなった。さらに、カットに入ることが多い遊撃の鳥谷にも役割の変化が生まれていた。

 鳥谷

 (カットまでの送球は)問題ないと思います。金本さんがステップしたら、自分も合わせて後ろに行く。去年は「距離を縮めて」と言われたけど、今年は「ステップを踏んで投げるから」と言われている。僕の方から距離を縮めることはありません。

 昨年は左翼方向に打球が飛ぶと、鳥谷が深い所まで追いかけ、至近距離でカットに入る場面がたびたびあった。これも送球時の負担を考えたシフトだったが、今年は金本自身が解除を申し出ていた。これも肩の状態に自信が出たからこそ。助走をつけるステップのしぐさをバロメーターとして、鳥谷への送球の長短、強弱の呼吸をはかっていく。

 山脇コーチ

 明日はシートノックもやるしカネも入るんちゃうか。(打撃練習の球を追う)打球補もやるし、その時は暗いと思う。

 今日9日、チームは3日後の開幕に備えて甲子園でナイター練習を行う。金本も左翼の守備位置に就き、夜への感覚を養う。20年目の春へ、いよいよ最後の仕上げに入る。【松井清員】