<オリックス0-4日本ハム>◇21日◇京セラドーム大阪

 大記録も、完投も逃してもポーカーフェースを貫いた。日本ハム武田勝投手(32)は肩の荷が下りた快感に浸った。「そんなつもりはサラサラない。早く楽になりたいと思っていた」。6回まで打者18人で完全。球場に異様なムードが漂った7回に2安打を許したが、軽々と2連勝をつかんだ。「やっと緊張感、緊迫感から解き放たれた」と笑い飛ばした。

 真骨頂は気持ちが緩んだ直後、大胆かつ繊細な1球に凝縮した。7回。先頭打者の坂口に中前へ落ちるテキサス安打で、初めて「H」のランプをともされる。犠打で二進後、後藤の左前打で1死一、三塁とピンチを広げた。リードは2点。「強気な気持ち。開き直った」。1発ならひっくり返されるT-岡田を迎え、記憶を呼び戻しながら再びスイッチを入れた。

 初球。胸元を高めシュートで突いた。見逃せばボール球で誘い一併。直前5回の第2打席で低めシュートに手を出していた。「手を出してきそうな感じがあったし、まずはそこで勝負」。捕手・大野のサインは内角で、高低の決めごとはない。故意にボール約1個分、自らの判断で高くした。術中にはめ、今季チーム初の完封勝利を導いた。

 プロ6年目で熟練の域に到達した投球術の幅。ゆとりを持たせた生活にも比例している。キーワードは快食。自宅では愛妻が管理した和食中心だが、遠征先では「好きな物を食べる」のがポリシーだ。体脂肪率は投手陣の中でトップクラスも、ストレスをためないことを優先。メリハリを効かせた土台が一瞬、1球1球へ傾ける集中力を維持する源にもなっている。

 私生活に象徴される抜群のセルフコントロールで、役目を果たした。梨田監督も「バットの芯を外すというか、打者を崩している」と脱帽。この日最速は130キロでも、技術と知力で圧倒した。「チームがいい流れで、自分も乗っていけた」と控えめに、あくまで周りを立てた。どんな時も自然体、等身大の自分と向き合う。武田勝の最大の強みは、どこまでも健在だった。【高山通史】