<オリックス0-4西武>◇23日◇京セラドーム大阪

 チームの浮上には、やはりこの男が欠かせなかった。西武がオリックスを破って連敗を5で止めた。最近4戦でわずか1点だった低調な打線にあって、不振を極めていた片岡易之内野手(28)が5打数2安打。片岡がつないだチャンスを栗山が決めて、44イニングぶりの適時打で先制し、単独最下位転落の危機を免れた。打率1割台と低迷していたリードオフマンが復調の兆しを見せ、チームがにわかに活気付いてきた。

 片岡がトンネルを抜けた。5回の第3打席。高めのボール気味の直球を強引につかまえて左翼線にはじき返した。20打席連続無安打中。試合前の時点ではパ・リーグ打撃成績の最下位に沈んでいた。「帰ったら泣くわ。ヒットになって良かった」。7回も2死一塁から中前打でつなぎ、栗山の適時打の呼び水となった。

 最後に安打を放った17日から5連敗。「勝っていたら救いもあったけど、より責任を感じていた」。2月に右足甲を捻挫し、開幕前の調整を満足にできなかったのが不調の遠因。さらに、連敗というチーム状況がメンタル面で拍車を掛けた。ファウルゾーンへ打ち上げた打球を見ずにベンチに帰ったこともあった。キャンプから始めて毎日のようにしていた自身のツイッター更新も途絶えていた。

 ただ、この日は試合前から様子が違った。サインを求めてきた子どもの頭をはたいてじゃれ合った。1回、先頭打者で中飛を打ち上げると笑いながら“お手上げ”のポーズでベンチへ。前日までの悲壮感はなかった。「『まじめな片岡さんなんて見たことない』って友達に言われたんで。チャラくいこうと」。その友達。西武ファンのタレント・ウエンツ瑛士だった。業界を超えたアドバイスを実践して結果につなげた。

 この試合、渡辺監督は打順を組み替えたが、片岡は動かさなかった。「ヤス(片岡)が下位にいたところで(状況は)変わらない。1本出ると乗ってくるタイプ。どういう形でも出してほしかった」。変わらぬ信頼を打順で示し、復調を待った。不動の1番は2安打で期待に応え、チームは5試合ぶりに2ケタ安打。同監督は「やっぱりヤスに出たのが大きい」と目を細めた。

 「見た目は好青年、中身はチャラくいきます」とイタズラっぽく笑った片岡。しかし、不振脱出か、との質問には「自分の中でいいスイングだったらいいけど、形も何もないから」と気を引き締めた。眠っていた分だけ、これから暴れるつもりだ。連敗が止まった。片岡にヒットが出た。この1勝の価値は大きい。【亀山泰宏】