<ソフトバンク5-4ロッテ>◇23日◇鹿児島

 ケガにサヨナラ

 ダ!

 ソフトバンク小久保裕紀内野手(39)が復帰戦で、劇的なサヨナラ打を放った。ロッテ戦の9回裏。2死一、二塁でロサから中越え安打を放ち、今季3度目のサヨナラ勝ちを決めた。開幕戦の第2打席で右手親指をはく離骨折。驚異的な回復力で抹消から最短復帰を果たした主将が、チームに今季初の3連勝をもたらし、単独首位に浮上させた。

 帰ってきたキャプテンに最高の場面が巡ってきた。4―4の同点に追いつかれた直後の9回裏2死一、二塁で、小久保がこの日5度目の打席に立つ。ロッテ4番手ロサが投じた2球目。外角低めの直球を振り抜くと、打球は中堅手の頭上を越えた。一塁ベースを回ると両手を高く突き上げ、駆け寄った仲間と優勝を決めたように喜びを爆発させた。

 「何か、いま夢見てるみたいですね。打席が回ってきたら自分で決めるという強い意志を持って臨んだ」

 2つの理由で、この打席ではいつも以上に集中力を極限にまで高めていた。復帰初戦で4打席目まで無安打。「4打席目までヒットがなくて、負けると責任を感じるので打ててよかった」。連勝中だったチームの勢いを止めるどころか、今季初の3連勝へ導いた。

 主将として守護神も救った。2点リードの9回表に不調の馬原が4安打2失点で同点に。負ければ最悪となっていたムードを一振りで消し去り、守護神に気持ちを前に向かせた。「それにしても今年はいろんなことがある。馬原が立ち直ってくれるのを願うだけ」。

 右手はまだ万全とは言えないが、強靱(きょうじん)な精神力で最短復帰にこぎつけた。開幕戦で死球を受け、右手親指をはく離骨折。19、20日には、福岡市内で右手親指のはり治療を行った。「骨折の箇所に針を打つと治りが早い。髄液が出て。でも、今回は骨折しているところの周り。(針打って)ギャーって声上げたら、先生喜びよったわ」。

 痛みや苦しみも笑い飛ばすプラス思考が復帰戦でのサヨナラ勝利を呼んだ。一塁の定位置でフル出場し。マウンド上の杉内や馬原のところに何度も足を運んで勇気づけた。そして今季初安打となるサヨナラ打。この一打で2000安打まで残り129本とした。

 「思い出深い初ヒットになった。(持ってる、という問いに)確かに持ってるな」

 自らのバットで復帰戦をド派手に飾った「持ってる主将」が、必ず今季中の偉業達成とチームに連覇をもたらす。【倉成孝史】