<日本ハム11-2オリックス>◇14日◇函館

 日本ハム打線が、今季初の地方主催試合となるオリックス戦(函館)で、大爆発した。2回に打者一巡の猛攻で8得点を奪うなど、先発全員安打で、今季初めての2ケタ得点。打撃不振で苦しんでいた主砲の4番小谷野栄一内野手(30)にも、32打席ぶりに安打が生まれた。貯金は再び今季最多タイの「6」となった。

 次から次へと耳に届く味方打線の快音の響きが、本来の感触を呼び覚ましてくれた。打者一巡の猛攻でまわってきた2回1死二塁。小谷野の打球は、左前で弾んだ。「あの回、僕しかアウトになっていなかったんで…。みんなの勢いで打たせてもらいました」。

 今月3日のオリックス戦以来となる、実に32打席ぶりの安打。「ふ~っ。長かった。何カ月も打ってない感じがした」。一塁へ向かいながら、思わず握りしめた右拳。清水一塁ベースコーチと思わず抱き合った。振り向くと、ベンチではチームメートがその何倍ものガッツポーズを向けてくれた。

 敵のマウンドにいたのは木佐貫。くしくも32打席前、最後の安打を放った相手だった。「それは覚えていました」。あのときと同じように、143キロ直球を左前に運んだ。ベンチも沸いた待望の1本は、打者一巡の猛攻を締めくくる一打となった。

 バットの重さを変え、早出でロングティーを行うなど、試行錯誤の連続だった。だが結果が出なくても、努めて明るく振る舞ってきた。「僕のせいで雰囲気を悪くしたくなかった。苦しいときこそ、笑顔でいようと思った」。気を使うように静かに隣にいる好調の中田へ、あえてプロレス技を仕掛けて盛り上げ役にもなった。使い続けてくれた監督、指導を続けてくれたコーチへ、グラウンド上で悩んでいる姿は見せたくなかった。「いつも励ましてくださった。ここから調子を上げていきたい」。恩に報いるために復調を誓った。

 2回に打者一巡の猛攻を繰り広げた打線は、今季最多の11得点を奪った。気温8・6度と肌寒い中で声援を送ってくれたファンへ、熱のこもった快打ショーのプレゼント。梨田監督は「いいつながりができた。効果的だったね。初戦を取れたことは大きい」。8回の陽の右前打で先発全員安打も記録。100万ドルの函館夜景のように、全員が輝いていた。【本間翼】