<西武5-6中日>◇20日◇西武ドーム

 持ってる男が竜にもいた。プロ3年目の中日小熊凌祐投手(20)が、奇跡的な逆転勝ちでプロ初勝利を手にした。4点リードされて迎えた8回に2番手として登板したが、いきなり中島、中村の主軸に連打を浴びて1失点。その後は最速148キロの直球を軸に踏ん張ったが、反省が残る内容だった。

 ところが幸運の女神が舞い降りた。9回表に打線が5点差をひっくり返して逆転し、白星が転がり込んだ。ゲームセットの瞬間、ベンチから出てきた背番号64は恥ずかしそうにペコリ。ヒーロー佐伯からウイニングボールを受け取った。

 小熊

 ボールはもらいましたけど、自分の力じゃないですから…。自分が狙った投球ができるように次は頑張ります。

 過去2年間はケガと手術を繰り返した。しかし、3年目の今年はキャンプから常時1軍に帯同。稲葉投手コーチと二人三脚で作り上げてきた投球フォームも固まりつつある。

 大津市の実家ではこの日、家族がテレビで初勝利をしっかり見届けた。母・佐喜子さん(56)は「奇跡ですね」。現在、実家には小学校から集めた3個のウイニングボールが飾ってある。小熊は「家族に送ると思います」と恥ずかしそうに笑った。プロ入り後初めてとなる勝利球。勲章が一つ加わった。【桝井聡】