<西武4-1巨人>◇1日◇西武ドーム

 省エネ投球で凡打の山を築いていた西武涌井秀章投手(24)の顔つきが変わった。7回。浅村の失策をきっかけに無死一、二塁。打席に主砲ラミレスを迎えた。「クリーンアップでしたし、あそこで点を取られたら去年までと変わらない」。勝負どころで大胆にギアチェンジ。それまでの変化球主体の投球から一変、力でねじ伏せる真っ向勝負に打って出た。140キロ前後だった球速も急上昇。最後は、この日最速の148キロで詰まらせ右飛に打ち取った。5番阿部も併殺打に仕留めて無失点で切り抜けた。

 続く8回も三塁中村の失策で先頭打者の出塁を許したが、再びギアを上げて得点を与えなかった。この日、涌井が全力で腕を振ったのは、この2イニングだけ。「(味方に)エラーがついたので、どうしても抑えたかった。力を入れました」。エースの自覚がぎっしりと詰まった、3戦連続の完投勝利だった。交流戦最多タイの20勝目。11球団で唯一の未勝利チームからの白星も手にし「巨人に勝っていないのは分かっていた。早く勝ちたいと思っていたので、勝てて良かった」と、笑みを浮かべた。

 150球や160球は当たり前のように投げてきた。無尽蔵のスタミナを前面に出して相手打線との根比べを制してきた涌井が、明らかに変化している。ここ3試合の球数を見れば一目瞭然。115球、112球、そしてこの日は102球にまで減った。

 涌井は「球数を聞いてビックリ。こんなに少ない球数なんて、考えられないじゃないですか」と苦笑いした後で「(巨人打線は)初球から振ってくる。1球勝負のつもりで」と、すべての球に意図を込めた。5月上旬に「勤続疲労」による右ひじ違和感で登録抹消されたエースは、何かをつかんで戻ってきた。【広瀬雷太】