<楽天2-6ソフトバンク>◇28日◇東京ドーム

 ソフトバンクが楽天とのIT東京決戦を制した。ソフトバンク孫正義オーナー(53)、楽天三木谷浩史会長(46)の両球団トップが視察した異例の1戦で、4番小久保裕紀内野手(39)が先制ソロ&逆転3ラン。今季初の1試合2発を含む4安打4打点の活躍で、チームの貯金を今季最多の21に戻した。

 ソフトバンクファンの大声援が歓喜に変わった。華麗な放物線の直前だった。孫オーナーがVIP席から身を乗り出し、約8000人を動員したグループ社員の歓声を巻き起こしていた。1点を追う6回無死二、三塁。主将小久保がグループ総帥の激励に応えた。塩見の高めスライダーをすくい上げた。バットを高々と放り投げるフィニッシュが、劇的弾を確信させた。左翼席中段へ、逆転6号3ラン。今季初1試合2発で勝利への立役者となった。

 「孫オーナーがあれだけの応援を連れてきていただいて。IT対決で。こんな大観衆になるとはビックリしました。いいところを見せられてよかった」。

 2回には先制弾を放っていた。塩見の内角直球をさばき、左翼席へ5号ソロ。左腕投手からのアーチは今季初で、通算では史上6人目の204投手斬りを達成。若き投手をプロ18年目のベテランが打ち続けているには、理由がある。

 日本ハム斎藤、西武大石&牧田、楽天塩見ら有望投手がプロの門戸をたたいた今年、若き投手との対決が何よりの楽しみだった。塩見には5月5日の初対決で3打数無安打に抑えられ、チームもプロ初登板で初勝利を献上していた。

 「右打者の内角球が勝負球。それを打ち返さない限り、崩せないと思っていた」。

 球の軌道をたたき込む万全予習で、2度目の対決では2本塁打と粉砕した。

 故障者続出のチーム状況で、この日カブレラがスタメン復帰。3番に37歳松中、4番に39歳小久保、5番に39歳カブレラの「115歳クリーンアップ」が今季初めて形成された。6回逆転弾の前には、松中が三塁線を破る打球で二塁まで走る好走塁だ。

 「ノブヒコがよく走ってくれた。二、三塁になって内野が後ろに下がったので、内野ゴロでもいいと、思い切りいけた」。

 バットを目いっぱい長く持ち、松中の思いも背負い、放物線を描いた。小久保の今季3度目の4安打を筆頭に、主軸3打者で計8安打。115歳トリオがオヤジとは言わせない活躍だ。チームはリーグ戦再開後、連敗スタートもすぐに連勝で星を取り戻し、貯金は最多タイ21。2位日本ハムに3ゲーム差をつけた。IT東京決戦を制した鷹が、再び高く舞い始めた。【松井周治】