<ヤクルト4-2巨人>◇6日◇神宮

 セ・リーグ防御率トップのヤクルト館山昌平投手(30)が、2失点完投で今季7勝目を挙げた。今季の巨人戦は3試合全てに8回以上を投げて2勝目。2回には右翼フェンス直撃の勝ち越し二塁打を放つなど投打で活躍した。チームは昨年まで10年連続で負け越した巨人に97年以来の6連勝。貯金は今季最多を更新する11に増えた。01年以来の優勝に向けて、ツバメの勢いがさらに加速する。

 飛ばないはずの統一球が、右翼スタンドに向かって伸びた。同点に追いつかれた直後の2回1死二塁。今季12試合でわずか1安打だった館山が、9番打者として右翼フェンス直撃の勝ち越し二塁打を放った。「バットを持っているので、チャンスはあるのかなと」。もうひと伸びでスタンドインの大飛球。外角の直球を強くスイングして、貴重な1点を奪った。

 真夏の神宮で、投げて、打って、守る。

 序盤は制球が定まらず、3回までに2失点した。気温30度を超える猛暑。腕の振りが自然と鈍くなっていた。だが、ここでフォークに光明を見いだすのが、館山の強さだ。1回1死一、三塁のピンチで、ラミレスをフォークで併殺打に打ち取った。3回1死一、三塁では主砲に5球連続のフォーク勝負を挑む。「あとはどっちに落とすかだけです」。同じ球種でもスライダー変化、シュート変化と自在に曲げて沈める。徹底的に低めを攻め、最後は138キロで空を切らせた。

 由規、村中が脇腹痛で離脱する中、5月31日のロッテ戦以降、中5日で先発マウンドに上がり続ける。今季4度目の完投勝利で、連投が続く中継ぎ陣を休ませた。「それが一番大きい。頼ってばかりいるので」と大黒柱の自覚だった。

 昼間の練習時点で、神宮周辺は気温32度を超えていた。それでも指先の感覚を大事にするため、厚手の手袋をしてウオーミングアップを行う。昨年6月は右足第4中足骨の疲労骨折で戦線離脱。以降、アップシューズには約5万円の特注中敷きを敷いてケア。オフに肉体改造を行い、5~6キロ増やした体重は、真夏でも99キロにキープしている。

 体へのこだわりは細部にわたる。「体重は絶好調です」と、夏バテには無縁。シーズン中でも筋トレは欠かさないが「維持になるから、あまり面白くない」と、ビルドアップできないもどかしさと闘う。8回には鍛えた体を俊敏に使い、阿部の投ゴロをグラブに当てて好捕。3時間10分の試合に、培った力を凝縮させた。

 野手陣は午前中に静岡から東京に移動。この1週間で3度目の移動ナイター。小川監督は「本当によく粘ってくれた。だるそうな感じがあってどうなるかと思ったが、よく粘ってくれた」と賛辞を贈った。対巨人14年ぶりの6連勝で、貯金は今季最多の11。七夕の前夜を、大きな夢がかなう予感漂う勝利で祝った。【前田祐輔】