<巨人1-2ヤクルト>◇15日◇東京ドーム

 ヤクルトの強さ、安定感だけが際立った。5月1日以来の登板となった村中恭兵投手(23)が6回4安打1失点で今季初勝利。同点の6回は伏兵田中の1発で勝ち越す横綱相撲を見せつけた。巨人戦の8連勝は国鉄時代以来、54年ぶりとなった。4連勝で貯金を今季最多15とし、2位中日との差を7ゲームに広げ、ますます独走態勢に入った。

 ヤクルトファンが集った東京ドームの左翼席へ、村中がハニカミながら手を振った。5月1日の阪神戦以来、2カ月半ぶりの1軍マウンド。「頭の中が真っ白でした。ケガをしてチームに迷惑を掛けたけど、ここに帰って来られて良かった」とかみしめた。6回1失点でつかんだ今季初勝利を、静かに喜んだ。

 強い気持ちで、巨人打線に立ち向かった。「一番注目されているチーム。意識はあります」。巨人先発は同じ背番号「15」を背負う沢村。スピードが売りの新人に対して、この日の村中は最速144キロで、130キロ台の直球も多かった。

 脇腹を痛める前の、150キロに迫るスピード表示はまだ戻らない。その中で「腕を振ってコントロールを意識した」と言う。スピンの効いた直球で球速以上に速く見せる。「その割に空振りが取れた」と自信を取り戻した。1回は直球、フォークのコンビネーションで、1番坂本、3番大村から2三振を奪った。6回80球。後半戦への余力を残して、マウンドを下りた。

 5月1日の阪神戦の1回、好調だった体が悲鳴をあげた。右脇腹肉離れで、全治4週間の診断を受けた。「普通の生活ができなかった」。寝返りを打つ度に激痛が走る。2時間ごとに目覚めては、浅い眠りに落ちる日々が続いた。2軍のヤクルト戸田球場の陸上トラックを、歩くトレーニングがスタートだった。

 「焦って後退すると余計時間がかかる。できるだけ慎重にやってきました」。投球練習を再開したのは6月に入ってから。同15日に初めてフォークを投げた。その間、チームは快進撃を続けたが、テレビは見られなかった。「見ると焦ってしまう」と携帯や新聞でチェック。復帰への道筋が見えた7月に入り、ようやくテレビの前に座った。ギリギリの精神状態から、はい上がってきた。

 これで対巨人は54年ぶりの8連勝。8勝目を挙げたのは57年8月11日で、53歳の小川監督が生まれる19日前の出来事だった。小川監督は「巨人が調子が出ない中で、ラミレス、小笠原を欠いての戦いですから」と謙遜するが、これで貯金は15。村中に続き、後半戦には由規が復帰する。盤石な投手陣がそろい、ツバメの1人旅が加速する。【前田祐輔】