<横浜3-5阪神>◇20日◇横浜

 阪神真弓明信監督(58)がゆらりとベンチを出た。マウンドに終結していた選手たちの視線が集まる。2点差に詰め寄られ、なお8回1死一、二塁のピンチ。指揮官は「8回の男」小林宏投手(33)をわずか1アウトで交代させた。

 真弓監督

 あまり当たりはいいわけではないけど、ヒットになっている。嫌な感じがしたから、思い切って代えました。

 勝負に徹して決断した。雨中の8回、5-2で小林宏がマウンドへ。先頭金城は打ち取ったが、3連打を浴びて1点を返された。横浜十八番の乱打戦に飲み込まれかけた。小林宏は5月7日横浜戦でも8回に2点リードを逆転された。わずか1死でKOされ、移籍後初黒星を喫している。悪夢の二の舞いを避けるため、ベンチは動いた。

 修羅場に上がったのは右腕渡辺だった。守護神藤川のイニングまたぎはまだ封印している。普段「EKK」の前を投げる29歳は、同点の走者を背負いながら、最高の仕事をした。いずれも左打者の下園を右飛、石川を遊ゴロでピンチ脱出。ベンチの期待に応えて、横浜の勢いを寸断した。

 渡辺

 思い通りにゴロとフライでアウトが取れた。いい場面で投げさせてもらって、抑えられてよかった。僕は「行け」と言われたところでいくだけ。

 この日の小林宏は降板時にまだ2点のリードがあった。しかし危機を察知して「8回の男」にスパッとスイッチした。真弓監督は、今後の8回について「どうかね?」と煙に巻いた。順位も日替わりの混戦シーズン終盤。勝利を追求する継投がズバリと当たり、逃げ切りに成功した。【益田一弘】