<中日3-2ヤクルト>◇22日◇ナゴヤドーム

 突然の監督退任発表のなか、中日がヤクルトとの4連戦初戦に逆転勝ちを収めた。相手先発館山の前に、5回まで無安打無得点。しかし6回、トニ・ブランコ内野手(30)の初安打が同点打になると、そこから連打で2点を奪って勝ち越した。表情を硬くして試合に臨んだ選手たちだが、集中力を切らさず、ヤクルトとのゲーム差を3・5差とした。

 オレ竜が戸惑いの逆転勝利を手にした。監督退任の発表で異様な空気に包まれていたナゴヤドームに、ようやく快音が響いた。口火を切ったのはブランコだ。1点を追う6回2死二塁。真ん中に入ったヤクルト館山のフォークをひっぱたいた。続く谷繁がフェンス直撃の左越え二塁打を放ち逆転。この回4安打3得点で一気にヤクルトを追い詰めた。

 「1つ勝った。今日は終わったんで、また明日頑張ります。僕たちは勝たないと追いつかない。1試合、1試合勝てるように頑張るだけ」。首位ヤクルトに3・5ゲーム差。ヒーロー谷繁はお立ち台で大歓声を浴びてさわやかに笑った。だが、数分後に報道陣からの質問が監督退任に及ぶと「(聞いたのは)練習中かな。風のうわさで。オレがコメントすることじゃない」。戸惑いを封印するかのように努めて冷静に答えた。

 選手たちは報道陣からの問いかけや、球場内の大型ビジョンに映し出された「中日新聞ニュース」で、退任を知った。落合監督に抜てきされ、07年からレギュラーを獲得した森野は「何も聞いていないので話しようがありません」と硬い表情。「何で発表がこの時期なんですかね。会社の方針なんでしょうけど…」という荒木の言葉が、選手たちの戸惑いを代弁していた。

 試合後のブランコは「信じられない。試合中も寂しい気持ちになった。優勝して良い思い出を作ってもらいたい」と目を血走らせ、井端は「勝つしかないです。長い間、お世話になっているんで」と表情を引き締めた。シーズンの行方を左右する4連戦。その大事な初戦をものにした。だが、勝利の余韻に浸る感じは全くない。はるかに大きな衝撃がチームに襲いかかった。