<中日3-0ヤクルト>◇10日◇ナゴヤドーム

 どえりゃ~強いがや!

 中日がヤクルトとの天王山第1ラウンドに完勝した。運命の4連戦で先陣を切った先発山井大介投手(33)が7回7安打無失点の好投。救援陣も無失点で締めて今季17度目のシャットアウト勝ちだ。今季、度重なる故障で苦しんだ右腕がしっかりと流れをつくり、連覇へ大きく前進。あす12日にも優勝マジック4が点灯する。

 体中から熱い思いがこみ上げた。試合終了の瞬間。真っ先にベンチを飛び出してナインを出迎えたのは山井だった。7回7安打無失点。魂のこもった102球。シーズンの行方を左右するヤクルトとの首位攻防戦。その初戦。大きな流れを作り出した。

 山井

 全試合集中しているんですけど、今日は特にね。中継ぎ陣には迷惑掛けているんですけど、今回は飛ばしていきました。気持ちで抑えた感じです。

 決して絶好調とは言えない内容だった。持ち味の変化球の制球が定まらない。4回には2死から畠山、バレンティンに連打を浴びたて2死一、二塁。それでも宮本をスライダーで中飛に抑えてピンチを脱した。6回も2死三塁で畠山を直球で空振り三振。打っても5回2死から左二塁打で出塁し、3点目のホームを踏んだ。今季は左足首骨折などでここまでわずか2勝だったが、ポストシーズンに強い男が“大一番”で燃えた。

 ストイックな姿勢がその投球を支えている。登板日の翌日。激しい戦いを終えた先発投手の腕は毛細血管が破れて内出血を起こすことがあるという。山井はシーズン中、食事に出てもアルコールはビールをコップ1杯までと決めている。血管が膨らみ腕の回復が遅れることを防ぐためだ。山井には祝い酒もやけ酒もない。シーズン中はそれだけ投球に全力を注いでいる。

 良いときは良いが悪いときはダメ。ときに“完璧主義者”と評されることもあった。ただ、落合監督の評価は一貫している。「持ってるものは一級品なんだ」。07年日本シリーズでは完全試合1歩手前の9回に岩瀬とスイッチし、話題を呼んだ。ただ落合監督の姿勢はその前もその後も変わらない。起用法を間違わなければしっかりと力を出す-。だからこそ大事な1戦目を山井に任せたのだ。

 「その場面、場面でいい仕事してるよ。このままの状態でいいんじゃないか」

 落合監督はニヤリとほおを緩めながら言った。ヤクルトに底力を見せつけるような完勝劇。ここ数日と同じように選手の個人名を挙げることはなかった。ただ、胸の内には山井の名があったに違いない。【桝井聡】