阪神がヤンキースとの契約が切れた井川慶投手(32)の獲得調査に乗り出すことが3日、分かった。06年オフにポスティングシステムを活用し、阪神から米大リーグに挑戦したが結果を残せなかった。米球界残留が第1希望だが、国内復帰に備え古巣球団が今後の動向をチェックする方針だ。オリックスは交渉解禁となったこの日、電撃アタックしたことも判明。複数球団による争奪戦に発展する可能性がある。

 かつての左腕エースが猛虎に帰ってくる可能性が浮上した。阪神がヤンキースとの契約が切れた井川の獲得調査に乗り出すことが明らかになった。「もしも日本に復帰するとなれば、しっかりと調査して、検討しなければならない」と球団首脳が言う。

 井川は06年オフにポスティングシステムを活用し、米大リーグ挑戦という夢をかなえた。ヤンキースが約30億円という巨額マネーで落札し、5年に及ぶ長期契約を結んだ。しかしメジャーで投げたのは07、08年の2年だけ。計16試合で2勝4敗の結果で名門球団の期待を完全に裏切った。井川自身は米球界残留を第1希望としているが、問題はそれが実現しなかった場合だ。日本復帰も視野に入るのは確実で、古巣球団としては、国内他球団に簡単に譲る考えはない。

 阪神は今季6年連続で優勝を逃しBクラスに転落。和田新体制で秋季キャンプをスタートさせたが戦力整備は完了していない。ドラフトで慶大・伊藤を指名し、若手野手の強化という課題はクリアした。投手力のアップが次なるテーマになる。能見や岩田、久保らで編成した先発ローテーションは高い水準にあったが「投手は何人いてもいい」という球団の補強方針がある。まして井川はエースと呼ばれた男だ。03年には20勝を挙げるなど沢村賞を獲得し、リーグ制覇に大きく貢献。復帰すれば、今オフの目玉補強のひとつになる。

 阪神は退団後も井川と友好的な関係を維持してきた。マイナー経験が豊富とあって、新外国人のアドバイスを求めることもある。その動向は、毎年チェックしている。最終年を迎える今季も当然、節目の年として、マークしてきた。ひとつ懸案事項があるとすれば、井川がシーズン中に左肘の痛みを訴えたこと。それがどの程度の症状かを慎重に調査する必要がある。

 外国人の1軍4枠すべてを満たす可能性がある阪神にとって、登録枠を気にせずに起用できる井川は、あまりにも魅力的な補強対象だ。状況次第でタテジマ復帰も現実味を帯びてくる。

 ◆井川慶(いがわ・けい)1979年(昭54)7月13日、茨城県水戸市生まれ。水戸商から97年ドラフト2位指名で阪神入団。03年20勝を挙げて18年ぶりのリーグ優勝に貢献。MVP、沢村賞を獲得。02年から5年連続2桁勝利。阪神9年間の通算成績は86勝60敗1セーブで防御率3・15。06年オフにポスティングでヤンキースへ移籍。だがメジャーでは07年の2勝だけで、今季までほとんどがマイナー生活。186センチ、93キロ。左投げ左打ち。