熱い、栗山流キャンプが幕を開ける。日本ハムは1月31日、春季キャンプ地の沖縄入りした。栗山英樹新監督(50)は、到着後即、球場やブルペンに出向いて自らの手で清めの塩をまいた。さらに全選手、コーチ、スタッフへ、日本一へ向けた強烈メッセージを記した特注のTシャツを配り、言葉ではなくサプライズプレゼントで奮起を促した。今日1日、新生栗山ハムが本格的に始動する。

 キャンプ地に降り立つと同時に、栗山流を強烈に打ち出した。全体ミーティングを終え、ジャージーへと着替えた栗山監督は、選手よりも先に球場へと足を踏み入れた。内野から外野、そしてブルペン、サブグラウンド…。自らの手で、清めの塩をまいた。

 「こんなことをしても何もならないかもしれないけど、神頼みというかね。オレがケガしてもいいけど、選手がケガをしないように。お願いしました」。沖縄産の食塩800グラムの袋から半分近くを使った。1度に600グラムをまくとされた大相撲の元関脇水戸泉級の豪快さ!?

 1カ月間の練習の充実、成功を祈願した。

 何よりも選手のことを最優先に考える指揮官の思いが表れていた。「選手が思いきりやれる環境をどうつくるか。ケガされると(調整が)バックしちゃうので、やり続けることが大事」。選手のため、チームのために、宿舎でじっとしていることなどできなかった。

 さらに、サプライズを用意してゲキを飛ばした。全選手、コーチ、スタッフに配られたのが、胴上げシーンのシルエットがプリントされ、自身の座右の銘である「夢は正夢」と記された特注のTシャツだ。メーカー担当者は「一般的にあれくらいのデザインであれば(1枚)3000~4000円くらいはすると思います」。300枚近くを用意する大盤振る舞いだが、それを着用し、目にする度に、日本一への意識が植え付けられることになる。

 到着初日のこの日のミーティングでは「キャンプは全員でやるものだけど、個人個人でやり方は違う」と、自主性を強調することを選手たちに伝えた。全体メニューの量は抑えめにし、個人練習の時間を多く取るスタイルは昨年までと変えるつもりはない。「全員で集まって練習するのは違和感がある」。個々でレベルアップを目指しながら、その集合体としてチームを強化する。そんな各選手をつなぐ共通項としても、Tシャツには存在意義がある。

 90年の現役引退後は、1度のコーチ経験もないままチームを指揮することになった栗山監督。「キャンプのテーマは自分が選手をしっかり見極めていくこと。それが宿題」と、表向きは静かな船出を予感させるが、裏では自身の色を明確に打ち出している。【本間翼】

 ◆監督の選手へのプレゼント

 好成績を挙げた選手への監督賞の賞金や、決起集会の飲食代をポケットマネーで支払うなどが主で、選手全員にTシャツを贈るのは珍しい。変わったところでは、90年にロッテ金田監督が首位打者になった西村徳文にサファイア指輪(500万円相当)を贈呈。03年にオリックス・レオン監督が、釣りが趣味の小倉恒に5万円相当のルアーをプレゼントする作戦でチームの連敗阻止を図ったが実らず。07年にはソフトバンク王監督が練習で自腹の10万円をかけ“王貞治カップ”として本塁打競争を実施した。Jリーグでは08年、浦和エンゲルス監督がパスタとピザ50人前を注文し全選手にふるまった。