<練習試合:DeNA6-5オリックス>◇19日◇宜野湾

 DeNAが「神風」を味方につけて記念すべき球団初勝利をマークした。対外試合3戦目となるオリックス戦で中畑清監督(58)の勝利への執念が奇跡を呼んだ。4-5で迎えた8回裏の攻撃で、ホームから左中間への強風が敵失を誘い同点に追いついた。なおも2死二塁からルーキー高城俊人(たかじょう・しゅうと)捕手(18=九州国際大付)の右前へポトリと落ちるテキサスヒットで勝ち越しに成功。幸運な白星に「髪の毛が抜けるくらい興奮した」と絶好調だった。

 中畑監督がウイニングボールを惜しげもなくスタンドへ投げ入れた。最後の三飛を捕球した内藤から渡され、新生ベイスターズ3試合目で手にしたものだった。「まだ公式戦じゃないから」と強がったが、1勝の重みを誰よりもかみしめていた。「興奮しすぎて気持ちが頭まで上がったね。髪の毛が何本か抜けたんじゃないかな」と、キャンプイン後のテンションは最高潮に達した。

 それもそのはず。監督の執念が神風を呼んだような逆転劇だった。1点を追う8回裏の攻撃。四球で1死一塁から、突如ホームから左中間へ強風が吹き荒れた。ドラマは後藤の平凡な捕邪飛を捕手が落球したことから始まった。これで生き延びると、さらに後藤の本来なら遊飛の当たりが風にあおられて左前へポトリ。1死一、二塁から、続く北の当たりは投ゴロ併殺コースだったが、遊撃手の悪送球で二塁走者が生還。あれよあれよという間に同点に追いついた。

 こうなったら流れは完全にDeNAへ傾いた。なおも2死二塁から、ルーキー高城が二塁後方へのテキサスヒットで勝ち越しを決めた。「三振したらどうしようもないからバットに当てれば何とかなると思った」と、追い込まれてからスライダーに腕を伸ばして食らい付いた結果だった。

 孝行息子の勝ち越し打に中畑監督も目尻が下がりっぱなしだった。「『持ってる』ね。お父さんじゃなくておじいちゃんの気持ちで抱き締めたくなったよ」と笑いが止まらなかった。キャンプは2軍スタートだったが、強肩を買って自ら1軍に招集した秘蔵っ子だ。「開幕1軍という可能性もある」とまで評価した。

 4年連続最下位チームの立て直しに「ベテランと若手の融合」をテーマに掲げている。その象徴となるべく高城の活躍が、明るい未来を想像させた。「最後まで諦めない姿勢が逆転勝利につながった。このままのスタイルで十分に戦える」と手応えを口にした。

 グラウンドを引き揚げる時、スタンドのファンから「巨人をやっつけて下さい!」と言われ、「やっちゃいます」と答えた中畑監督。25日に初の同一リーグとの対戦となる巨人戦でも「中畑劇場」が見られるかもしれない。【鳥谷越直子】