DeNAの3年目右腕、国吉佑樹投手(20)が首脳陣の期待に応える快投を演じた。21日、ハンファとの練習試合で6回から登板。3イニングを無安打無失点で危なげなく抑え、開幕ローテーションの一角としての期待をさらに大きく膨らませた。中畑清監督(58)もほれ込む注目株は、開幕投手争いにも意欲を隠さない。昨季プロ初勝利を挙げた育成ドラフト出身の雑草が、スターへの階段を上り始めた。

 クールな国吉の表情は最後まで涼しいままだった。6回から3番手で登板。いきなり四球を与えたが、第1打席で本塁打を放った4番打者をスライダーで狙い通りに三ゴロ併殺。最速143キロの速球で2個の空振り三振も奪い、8回まで危なげなく投げ抜いた。11日の紅白戦で2回4失点、16日の日本ハム戦で2回1失点。3度目の実戦で見せた会心の投球に「狙って併殺が取れたことは収穫。徐々に良くなってきているので、次に生かしたい」とようやく笑みがこぼれた。

 結果に内容も伴った。先発として長い回を投げるために取り組んできた「脱力」に確かな手応えをつかんだ。「力みがイニングをまたいだ後の投球に影響していた。なるべく力を入れないで、リリースの瞬間だけ腕に力を入れる意識で臨んだらすごく良かった」。2イニング目の先頭に本塁打を浴び、連続四球も与えた日本ハム戦(16日)の反省が生きた。この日は打者10人を35球。「今日みたいに無駄な力を入れずに投げれば、まだまだ投げられる」と余裕十分だった。

 中畑監督は国吉の好投に「役者になってきてるな。見た目以上に速いボールを投げる。『だんだん君のことが好きになる』と言ったら『ありがとうございます』と言ってた。ゆくゆくは結ばれたいね」と「べたボレ」の思いを隠さなかった。全員にチャンスがある先発争い。だが国吉は、さらにその先まで見据えている。「ローテーションを狙うからには開幕投手も狙いたい。最後まで開幕投手争いにしっかり食い込んでいきたいと思います」。次回は26日の日本ハム戦(宜野湾)で先発予定。どこまでも貪欲な20歳が、期待の星へと駆け上がっていく。【大塚仁】

 ◆国吉佑樹(くによし・ゆうき)1991年(平3)9月24日、大阪生まれ。熊本・秀岳館から09年育成ドラフト1位で入団。昨年7月に支配下登録され8月末からローテ入り。10月4日巨人戦で初勝利を挙げて8試合1勝4敗。196センチ。年俸1000万円。

 ◆DeNA先発陣

 6人の先発枠を多くの投手が争う。広島から移籍のジオ、2年目ブランドンの外国人コンビに加え、高崎、三浦、国吉がリード。さらに小林寛、小林太、巨人から移籍の藤井ら、多くの候補が争いに加わっている。