DeNA中畑清監督(58)が、プロ野球の人気復活という大きな目標に向かって船出する。球界参入決定から約4カ月。11勝6敗のオープン戦3位の好成績で手応えを得て、梶谷隆幸内野手(23)黒羽根利規捕手(24)らフレッシュな顔ぶれで今日30日の阪神戦に臨む。開幕前日の29日、宿泊先の部屋から大阪城を眺めて“天下統一”への決意を新たにした。

 監督として初めて迎える開幕。中畑監督は、天下人・豊臣秀吉が築いた大阪城が見える宿舎の自室で、「天下統一」と書かれた扇子を手に、シーズンへの決意を語った。「天下統一…。豊臣秀吉か。天下を取るためには、ちょっと戦力が整ってないけどね。こんな素材がいるんだ、という喜びを感じられたのはでかい。苦労して、苦労して、最後にいい結果になってくれればいいね」。いつもの底抜けに明るい口調ではなく、抑揚を抑えた声に、闘志がにじんでいた。

 大きな可能性を感じる若手に開幕戦を託す。先発マウンドは「バタバタせず、試合を作れるようになってきた」と評する高崎。守備の要となるセンターラインには黒羽根、石川、梶谷、荒波と、新球団を象徴するフレッシュなメンバーをそろえた。石川を除く3人は開幕初スタメン。ここに中村、小池、森本、金城の経験豊富な選手が加わる。全体練習では、最後まで元気のいい声がグラウンドに響き、中畑監督も「胸を張ってスタートラインに着きたい」と手応えを口にした。

 初陣に向け、けじめもつけた。この日の朝、元大洋(現DeNA)監督の青田昇氏が眠る神戸市内の墓地を訪れた。プロ野球選手としての礎を築いた「地獄の伊東キャンプ」で、ヘッドコーチとして鍛えてもらい、裏表のない人間性から、「人との関わり合い方を学んだ」恩師。現役引退後も「現場復帰を祈っていると、応援団長をやってくれた。恩師にやっと(就任の)報告ができたよ」。多忙もあり、来たくても来ることができなかった墓前で、しっかりと手を合わせた。

 中畑監督には、チームを作り上げることと、野球界全体を再び盛り上げたいという大きな目標がある。広場では、少年たちが好きな選手のまねをしながら野球を楽しむ。夕食時にはテレビから野球中継が流れ、家族そろってひいきの球団を応援する。そんな「ファンあってのプロ野球に戻したい」という思いがある。

 もちろん、中畑監督1人の力では難しい。それでも任された新球団が勝つ姿、どんな試合でもあきらめない姿をファンに見せ続けることができれば、その原動力になるはず。「やっぱり開幕は勝ちたいよ。そして、このチームの手応えを感じたい」と中畑監督。監督就任から113日目。チーム、そしてプロ野球界全体のファンに向けた第1歩を踏み出す。【佐竹実】