<阪神5-5DeNA>◇30日◇京セラドーム大阪

 キヨシ、大満足!

 球団買収で球界に参入したDeNAの中畑清新監督(58)が、初の開幕戦で手応えを感じ取った。序盤からシーソーゲーム。9回に阪神の守護神藤川を打って追いつき、延長10回、中村の犠飛で勝ち越し。その裏、山口が1点を守り切れず、引き分けに終わったが、同監督は最後まで諦めなかった選手をたたえた。ベンチでは喜怒哀楽を見せてチームを鼓舞。4年連続最下位のチームに新しい風を吹き込んだ。

 土壇場で追いつかれ、初勝利を逃したにもかかわらず、中畑監督の顔に悔しさはみじんもなかった。「開幕戦でこんなすごい試合ができて、引き分けでよかったな、と思うくらい。これだけの試合をやると、1年間もたないですね」。もちろん勝てれば言うことなしだったが、就任以来言い続けてきた最後まであきらめない野球を、初陣から実践した選手たちの姿がうれしかった。

 負けパターンの流れから、同点に追いつき、追い越した。2点勝ち越して迎えた7回。2死一、二塁から代打関本に逆転の3ランを食らった。京セラドームの虎ファンはお祭り騒ぎ。ムードは完全に阪神に傾いた。しかし、中畑監督が「負けない試合ができたのは大きな財産」と振り返った通り、選手はあきらめなかった。

 守護神藤川がマウンドに上がった9回。先頭の森本が右翼線を破る二塁打でチャンスメークすると、荒波が送って1死三塁。ここで左太もも痛で、スタメンを外れた代打ラミレスが、「何とかインプレーのところに打ちたかった。いいところに落ちてくれてよかったよ」と内角直球を執念で左前に落とす同点打。中畑監督は満面の笑みのハイタッチで、期待に応えた主砲を出迎えた。「同点に追いつく一打が打てるのは、僕の中ではものすごく価値がある。あの場面で最高のパフォーマンスをしてくれた」と絶賛した。

 10回には、そのラミレスに代わって4番に座った中村が、勝ち越しの犠飛。「あっさり負けるんじゃなく、勝ち越しまでいって、見ているファンは面白かったのでは。仲間がいい形を作ってくれて、4番目の仕事ができたかな」と、粘りの1本を振り返った。その裏に追いつかれたものの、選手たちの執念は、中畑監督にしっかり伝わった。

 「引き分けは全員で戦って、全員で出した答え。開幕試合だけど、今シーズン、何本かに入る試合だね。こんなこと言っていい?

 初心者なのに」。1つ勝つ難しさを痛感しながらも、手応えの大きさが、口も滑らかにした。お預けになった初勝利は、この勢いで取りに行く。【佐竹実】