<中日4-2広島>◇30日◇ナゴヤドーム

 あっぱれ、吉見!

 2年ぶりに開幕投手を務めた中日吉見一起投手(27)が8回3安打2失点と好投した。2年前に開幕戦で敗れた広島前田健太投手(23)との再戦でリベンジに成功。8回の先頭打者にヒットを打たれるまで完全ペースの内容だった。17年ぶりに指揮を執る高木守道監督(70)に、6149日ぶりの白星をプレゼントした。

 超満員のナゴヤドームにため息が充満した。8回無死。吉見が投じた外角直球を先頭の栗原にはじき返された。打球は二塁荒木が飛びついたグラブをかすめてセンター前に。ただ、この瞬間まで1人も走者を出さない完全ペース。この回に2点を失ったが、ガッチリと白星を手にした。これでポストシーズンを含めると、昨年8月13日横浜戦から14連勝。竜の大黒柱はやっぱりすごかった。

 吉見

 探り探りだったけど、バランス良く投げられた。すごく緊張しましたけど、前田君には負けたくないと思っていた。完全試合?

 そんなに甘いもんじゃないですよ。いつか打たれると思っていた。

 開幕投手という重圧を和らげたのは家族の存在だった。2月のキャンプ中に次男・脩(しゅう)君が誕生した。実家に戻っていた聡子夫人と次男坊が加わり、先週から家族4人の生活がスタート。昨年まで家族の頭文字を取って帽子のツバに「KSR」と書いていたが、この試合から「KSRS」に変わった。この日も一塁内野スタンドで最愛の家族が手を振っていた。

 吉見

 ボクから「今日は来ないとアカンやろ」って言いました。下の子は(聡子夫人の)親に預けてきましたけど。やっぱり家族あっての自分ですから。

 エースの力投に目尻を下げたのは、監督として95年5月30日横浜戦(浜松)以来、6149日ぶりに白星を手にした高木監督だ。試合前には選手1人、1人とガッチリと握手を交わして「グッドラック」と声をかけた。試合直後には、大声援に応えて思わずベンチから飛び出して観客に手を振った。

 高木監督

 やっぱり大きな勝利だよ。吉見がよく頑張ってくれた。ノーヒットノーランだったらどうなるんだろうと思って見てたよ。ウイニングボール?

 大事にしまっておくよ。

 豪快に笑い飛ばした指揮官。10年ぶりに古巣に復帰した山崎がマルチ安打、6番に起用した井端が猛打賞と活躍。そして開幕を託した右腕が好投。投打にかみ合った新生・ドラゴンズが、これ以上ないスタートを切った。【桝井聡】